世界の労働基準監督署からVOL011:亀戸労働基準監督署

2023年9月に、精神障害の労災認定基準が改正されました。そこで、今回は厚労省のリーフレットに基づき、改正に関する3つのポイントを紹介します。

ポイントを紹介するまえに、精神障害の認定基準の基本を確認しておきましょう。

  1. 認定基準の対象となる精神障害を発病していること
  2. 認定基準の対象となる精神障害の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること
  3. 業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められないこと

このことを前提に、改正内容をみていきます。

第1に、業務による心理的負荷(ストレス)評価表が見直し、「客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」、「感染症等の病気や事故の危険性が高い業務に従事した」を追加し、類似性の高い「転勤・配置転換等があった」などを統合しました。近年問題になっているいわゆる「カスハラ(カスタマーハラスメント)」が明記されたことは重要です。

また、パワーハラスメントの6類型すべての具体例、性的指向・性自認に関する精神的攻撃等を含むことなどを明記し、一部の心理的負荷の強度しか具体例が示されていなかった具体的出来事について、他の強度の具体例が明記されました。

第2に、業務外で既に発病していた精神障害の悪化について労災認定できる範囲を見直しました。変更前は、悪化前おおむね6か月以内に「特別な出来事」(特に強い心理的負荷となる出来事)がなければ業務と悪化との間の因果関係を認めていませんでしたが、変更後は、悪化前おおむね6か月以内に「特別な出来事」がない場合でも、本人の個体側要因(悪化前の精神障害の状況)、業務以外の心理的負荷、悪化の態様・経緯等を十分に検討したうえで、「業務による強い心理的負荷」により悪化したと医学的に判断されるときには、業務と悪化との間の因果関係が認められることになりました。

第3に、速やかに労災決定ができるよう必要な医学意見の収集方法を見直しました。主治医意見の他に専門医による医学的意見の収集を必須とする範囲等を見直したことで、労災決定までの期間を短縮できる事案が増加します

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参考リンク

心理的負荷による精神障害の労災認定基準を改正しました(厚生労働省HP)