写真は記事内容と関係ありません(新庄まつりの山車)

法務省が「育成就労制度・特定技能制度Q&A」を公開しました。そこで、今回は、そのなかで重要と思われるものをとりあげて、新制度の概要を解説したいと思います。

そもそも、今回の法改正はどのような目的でおこなわれたのでしょうか。Q1のAによれば、「技能実習制度を発展的に解消して人材育成と人材確保を目的とする育成就労制度を創設し、これまで技能実習制度において指摘されてきた課題を解消するとともに、育成就労制度と特定技能制度に連続性を持たせることで、外国人が我が国で就労しながらキャリアアップできる分かりやすい制度を構築し、長期にわたり我が国の産業を支える人材を確保することを目指すもの」とされています。

育成就労制度は、我が国の人手不足分野における人材育成と人材確保を目的とする制度です。そして、育成就労制度では、外国人を労働者としてより適切に権利保護するという観点から、技能実習制度では認められなかった外国人本人の意向による転籍を一定の条件の下で認めることに加え、受入れ対象分野を生産性向上や国内人材確保を行ってもなお外国人の受入れが必要な分野(特定産業分野)のうち就労を通じて技能を修得させることが相当なものに限り、原則3年間の就労を通じた人材育成によって特定技能1号の技能水準の人材を育成することを目指すものとしています(Q8のA)。

すでに、技能実習生を受け入れている事業所においても、育成就労制度での受入れを行うには、育成就労外国人を受け入れる産業分野が「育成就労産業分野」として設定されていることが必要です。育成就労産業分野とは、特定産業分野のうち就労を通じて技能を修得させることが相当なものをいいます。

なお、技能実習生の受け入れは、改正法の施行日までに技能実習計画の認定の申請がなされ、原則として施行日から起算して3か月を経過するまでに技能実習を開始するものまでが対象となります(Q7のA)。

次に育成就労制度の形態については、技能実習制度では企業単独型と団体監理型の2種類があったところ、育成就労制度で、外国の支店や子会社の社員等を育成就労外国人として受け入れる「単独型育成就労」と、監理支援機関が関与する「監理型育成就労」の2つの区分が設けられます。

「管理支援団体」とは、監理団体と同様に、主務大臣の許可を受けた上で、国際的なマッチング、受入れ機関(育成就労実施者)に対する監理・指導、育成就労外国人の支援・保護等を行うことになります。その上で、育成就労制度では、これらの機能をより適切に果たすことができるよう、監理・支援・保護機能を強化する方向で許可の要件を見直すこととしています。

具体的には、以下のような要件を新たに設ける予定です。

  • 受入れ機関と密接な関係を有する役職員の監理への関与を制限する
  • 外部監査人の設置を義務付ける
  • 受入れ機関数に応じた職員の配置を義務付ける

また、育成就労制度では、新たに外国人本人の意向による転籍が可能となりますが、転籍を希望する申出があった際、監理支援機関は、関係機関との連絡調整等の役割を担うことになります。

なお、監理団体が監理支援機関として育成就労制度に関わる業務を行うためには、新たに監理支援機関の許可を受ける必要があります(Q18のA)。

一方、受け入れ機関についても、受入れ人数枠を含む育成・支援体制等の要件については、適正化して維持する方向です。また、人材確保を目的とした上で、特定技能制度との連続性を持たせる観点から、特定技能制度と同じく、受入れ対象分野別の協議会への加入等の要件を新たに設ける予定とされています。また、制度目的を改める観点から、前職要件や帰国後の業務従事要件等の国際貢献に由来するものは廃止される予定です(Q22のA)。

受け入れ機関は、育成就労制度を利用する外国人を、原則3年間の就労を通じた人材育成を行うことになります。受け入れに当たっては、育成就労計画(技能実習計画)の認定手続が必要です。育成就労制度では、当初から3年間の計画を作成し認定を受けることとなります(Q13のA)。なお、3年を経過した場合であっても、特定技能1号への移行に必要な技能・日本語能力に係る試験に不合格となったときには、最長1年の範囲内で、一定の在留継続を認めることができる方針としています(Q10のA)。

なお、育成就労制度では、原則として、二国間取決め(協力覚書(MOC))を作成した国からのみ受入れを行うことを想定しています(Q12のA)。

一方、外国人に関して、入国時に技能に係る要件はありませんが、日本語能力に係る要件として、就労開始前に、日本語能力A1相当以上の試験(日本語能力試験N5等)の合格又はこれに相当する認定日本語教育機関等による日本語講習の受講が求められます。なお、必要となる日本語能力レベルについては、技能実習制度における取扱いを踏まえ、育成就労産業分野ごとに、より高い水準とすることも可能とする予定です(Q25のA)。なお、育成就労制度では家族の帯同は認めないこととされています(Q24のA)。

ところで、今回の改正では、一定の要件のもと、本人の意向による転籍が認められることになりました。具体的には主務省令で決定されますが、現時点ではパワハラや暴力などの人権侵害を受けた場合等「やむを得ない事情」がある場合の転籍を認めるほか、次のような一定の要件が予定されています。

  1. 転籍先の育成就労実施者の下で従事する業務が転籍元の育成就労実施者の下で従事していた業務と同一の業務区分であること
  2. 転籍元の育成就労実施者の下で業務に従事していた期間が、育成就労産業分野ごとに1年以上2年以下の範囲内で定められる所定の期間を超えていること
  3. 成就労外国人の技能及び日本語能力が一定水準以上であること
  4. 転籍先の育成就労実施者が適切と認められる一定の要件に適合していること
お問い合わせはお気軽に。043-245-2288

参考リンク

育成就労制度・特定技能制度Q&A(法務省HP)