複数事業労働者が安心して働くことができる環境を整備するため、複数事業労働者に関する保険給付について複数事業労働者を使用する全事業の賃金を合算すること、複数事業労働者を使用するそれぞれの事業における業務上の負荷のみでは業務と疾病等々の間に因果関係が認められない場合に、複数事業労働者を使用する全事業の業務上の負荷を総合的に評価すること等について、労災法等の改正が昨年行われたところですが、この取扱いに関しては不明な点も多かったため、厚生労働省が新たな通知を発出しました。

前提として、複数事業労働者休業(補償)等給付は、休業補償給付と同じように①「療養のため」②「労働することができない」ために③「賃金を受けない日」という3要件を満たした日の第4日目から支給されます。

このうち②については、複数事業労働者が、現に一の事業場において労働者として就労した場合には、原則、「労働することができない」とは認められませんが、「複数事業労働者が、現に一の事業場において労働者として就労しているものの、他方の事業場において通院等のため、所定労働時間の全部又は一部について労働することができない場合」には、「労働することができない」に該当すると認められることがあるとされました。

また、③については、複数事業労働者の場合、複数の就業先のうち、一部の事業場において、年次有給休暇等により当該事業場における平均賃金相当額の60%以上の賃金を受けることにより賃金を受けない日に該当しない状態でありながら、他の事業場において、傷病等により無給での休業をしているため、賃金を受けない日に該当する状態があり得ます。したがって、複数事業労働者の休業(補償)等給付に係る「賃金を受けない日」の判断については、まず複数就業先における事業場ごとに行うこととなります。その結果、一部の事業場でも賃金を受けない日に該当する場合には、当該日は「賃金を受けない日」に該当するものとして取り扱うこととされました。

したがって、一部の事業場で賃金を受けない日に該当し、一部の事業場で賃金を受けない日に該当しない場合、および全ての事業場で賃金を受けない日に該当する場合は、「賃金を受けない日」に該当するものとして、休業(補償)等給付の支給対象となります。

このうち、一部の事業場で賃金を受けない日に該当し、一部の事業場で賃金を受けない日に該当しない場合または全ての事業場で賃金を受けない日に該当しているものの、平均賃金相当額の60%未満の賃金を受けている場合の保険給付額は、下記①または②に基づき給付基礎日額から実際に支払われる賃金(平均賃金相当額を上限とする。)を控除した額をもとに保険給付を行うこととされました。

①「賃金が支払われる休暇」に係る保険給付額

「賃金を受けない日」に該当すると判断される場合であって、一部賃金が年次有給休暇等により支払われる場合は、給付基礎日額から実際に支払われた賃金(平均賃金相当額を上限とする。)を控除した金額をもとに、当該日についての保険給付を行うこととされました。

②「所定労働時間のうちその一部分についてのみ労働する日」

「所定労働時間のうちその一部分についてのみ労働する日」に該当するかについても、複数の就業先における事業場ごとに判断します。そして、「所定労働時間の一部分についてのみ労働する日」に該当する場合は、給付基礎日額から実際に支払われた賃金(平均賃金相当額を上限とする。)を控除した金額をもとに、当該日についての保険給付を行うこととされました。

以上の内容をまとめたものが次表となります。

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参考リンク

複数事業労働者の休業(補償)等給付に係る部分算定日等の取扱いについて(構成労働省HP,PDF)