賃金の消滅時効は延長の方向へ

厚生労働省が「賃金等請求権の消滅時効の在り方について(論点の整理)」を公表 しました。

労働関係における賃金等請求権の消滅時効については、現在、労働基準法第 115 条の規定 に基づき 賃金、災害補償、その他の請求権は2年間行使しな いときは消滅(客観的起算点)、退職手当の請求権は5年間 行使しないときは消滅するものとされています。

しかし、第 193 回国会において民法の改正法が成立し、消滅時効関連規定について も大幅な改正が行われ、一般債権に係る消滅時効については、①債権者が権利を行使する ことができることを知った時(主観的起算点)から5年間行使しないとき、又は ②権利を行使することができる時(客観的起算点)から 10 年間行使しないときに 時効によって消滅する、と整理されました。

しかし、賃金等請求権の消滅 時効については仮に見直すとなると実務的に影響が大きく必要な議論を尽くした 上で結論を出す必要がある旨の意見があったため、厚生労働省に「賃金等請求権の消滅時効の在り方に関する検討会」が設置され、賃金等請求権の消滅時効の在り方について検討を行い、今回の「論点整理」が取りまとめられました。

特に注目される賃金については、次のような課題等を踏まえ、速やかに労働政策審議会で議論すべきとされています。

  • 消滅時効期間を延長することにより、企業の適正な労務管理が促進される可能性等を踏まえると、将来にわたり消滅時効期間を2 年のまま維持する合理性は乏しく、労働者の権利を拡充する方向で一定の見直しが必要ではないかと考えられる。
  • ただし、労使の意見に隔たりが大きい現状も踏まえ、消滅時効規定が労使関係における早期の法的安定性の役割を果たしているこ とや、大量かつ定期的に発生するといった賃金債権の特殊性に加え、労働時間管理の実態やそのあり方、仮に消滅時効期間を見 直す場合の企業における影響やコストについても留意し、具体的な消滅時効期間については引き続き検討が必要
  • 新たに主観的起算点を設けることとした場合、どのような場合がそれに当たるのか専門家でないと分からず、労使で新たな紛争が生じ るおそれ。

このように、「論点整理」と題した文書ではありますが、賃金の消滅時効については現行の2年から延長するという方向性はある程度固まったと考えてよさそうな内容となっています。仮に5年となれば、未払い賃金の請求は事業に大きな影響を与えかねないリスクとなります。したがって、今のうちから労働時間管理や時間外手当等の支払いについて見直しを図る必要があるといえるでしょう。

なお、労基法の時効規定の改正の時期については、民法改正の施行期日(2020年4月1日)も念頭に置きつつ、働き方改革法の施行に伴う企業の労務管理の負担の増 大も踏まえ、見直し時期や施行期日について速やかに労働政策審議会で検討すべきとされました。

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参考リンク

「賃金等請求権の消滅時効の在り方に関する検討会」がとりまとめた「論点の整理」を公表します(厚労省HP)

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