image101過労死等防止対策推進法が6月27日に公布され、6月を超えない範囲内で政令で定める日から施行されます。そこで、今回は、厚生労働省HPに掲載された通達(H26.6.28基発0628第12号)をもとに、その概要についてみてみましょう。

まず、この法律において「過労死等」とは、「業務における過重な負荷による脳血管疾患若しくは心臓疾患を原因とする死亡若しくは業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡又はこれらの脳血管疾患若しくは心臓疾患若しくは精神障害をいう」とされています。

よくわかりませんね。なんでこんな書き方になったんでしょうか。箇条書きで整理すると、次のようになるでしょう。

  • 業務における過重な負荷による脳 血管疾患もしくは心臓疾患を原因とする死亡
  • 業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡
  • 業務における過重な負荷による脳血管疾患もしくは心臓疾患
  • 業務における強い心理的負荷による精神障害

本法では、このように定義した上で、次のような過労死等の防止のための対策を国が実施することを定めています。

  1. 政府は、過労死等の防止のための対策に関する大綱を定めなければならないこと
  2. 国は、過労死等に関する実態の調査、過労死等の効果的な防止に関する研究や、過労死等に関する情報の収集、整理、分析及び提供を行うこと。なお、この調査研究等を行うに当たっては、業務において過重な負荷または強い心理的負荷を受けたことに関連する死亡・傷病について、個人事業主や法人の役員等に係るものを含め、広く調査研究等の対象とするものとすること
  3. 国・地方公共団体は、教育活動、広報活動等を通じて、過労死等を防止することの重要性について国民の自覚を促し、これに対する国民の関心と理解を深めるよう必要な施策を講ずるものとすること
  4. 国・地方公共団体は、過労死等のおそれがある者およびその親族などが相談することができる機会の確保など、過労死等のおそれがある者に早期に対応し、過労死等を防止するための適切な対処を行う体制の整備・充実に必要な施策を講ずること
  5. 国・地方公共団体は、民間の団体が行う過労死等の防止に関する活動を支援するために必要な施策を講ずること

本法は、このように過労死等の実態調査や周知啓発、相談体制の整備などを国・地方自治体が実施することが盛り込まれています。

他方、事業主に対しては、これらの「過労死等の防止のための対策に協力するよう努める」という努力義務が課されているのみです。したがって、現時点では、本法により事業主が直接的な義務を負うことはありません。

ただし、大綱が作成され、監督署などによる集中的な指導が行われることは予想されます。

なお、第14条で、過労死等に関する調査研究等の結果を踏まえ、必要があると認めるときは、過労死等の防止のために必要な法制上または財政上の措置その他の措置を講ずるものとするという規定があり、将来的には、本規定をもとに新たな法規制が行われることも考えられます。

過労死は国の施策を待つまでもなく、事業主としても引き起こしてはいけないというコンセンサスはすでに形成されていると思います。長時間労働はもちろんですが、職場内でのいじめなども精神障害につながるケースもありますので、今後の厚労省が行う調査結果などもふまえて、自社でも防止対策を検討していくのが望ましいでしょう。

■関連リンク

過労死等防止対策推進法について(厚労省HP,PDFファイル)

 

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