image089今回は、昨年末に独立行政法人労働政策研究・研修機構(JIL)が公表した「労使コミュニケーションの実態と意義」を紹介します。なお、本調査は、「労働条件をめぐる労使コミュニケーションの実態を明らかにし、労使コミュニケーションの円滑化に必要な課題を示す」ための研究の成果の一つです。

ここでは、36協定の締結時の労働者側当事者に関する部分についてみていきましょう。

ところで、労基法では、三六協定について、①労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、②①の組合がない場合は労働者の過半数代表者と締結するものとされています。そして、②の過半数代表者は、いわゆる管理監督者でない者であって、選出にあたっては、三六協定締結のために過半数代表者を選出することを明らかにしたうえで、投票、挙手などにより選出しなければなりません。

そこで、実際の選出手続きがどのように行われているのかというと、まず「従業員過半数代表の候補者は、主に『会社の指名』(38.0%)と『他の従業員からの指名』(31.3%)によって決定」されていると、本調査では述べられています。そして、「従業員過半数代表の決定方法についてみると、全体では、『指名・立候補で自動的に決まる』の割合が 4 割を超えており、これが最も高い」ということが明らかになりました。

ここに、若干問題の可能性があります。というのは、厚生労働省の法律解釈(H11.1.29基発45号)では、過半数代表者について、管理監督者でないこと、投票・挙手等による選出のほかに、さりげなく「使用者の意向によって選出された者ではないこと」という文言が付け加えてあるからです。

では、本調査のように、過半数代表者が会社の指名で行われ、それによって自動的に過半数代表者が選出された場合、上記の過半数代表者の条件(要件)を満たさないケースが生じると考えます。裁判例では、親睦会の代表者が過半数代表として締結した36協定を無効としたもの(トーコロ事件・東京高判H9.11.17)もあることから、上記のような選出手続きをとるといったように慎重な取扱いをするに越したことはありません。

■関連リンク

労使コミュニケーションの実態と意義(JIL・HP)

MORI社会保険労務士・行政書士事務所では、日々生じる従業員に関する問題やちょっとした労働法に関する疑問、他社事例について、気軽に電話やメールで相談できる「労務相談」業務の依頼を受託しています。もちろん社会保険、給与計算(年末調整)、就業規則、各種許認可業務等も対応します。ぜひお問い合わせください。

toiawase