遺族年金の改正の概要
「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案」が2025年6月13日に成立しました。そこで、今回は改正された内容のうち、遺族厚生年金の見直しの概要について説明します。
遺族年金は、国民年金または厚生年金保険の被保険者または被保険者であった方が、亡くなったときに、その方によって生計を維持されていた遺族が受けることができる年金です。遺族年金には、「遺族基礎年金」「遺族厚生年金」があり、亡くなった方の年金の加入状況などによって、いずれかまたは両方の年金が支給されます。亡くなった方の年金の納付状況・遺族年金を受け取る方の年齢・優先順位などの条件をすべて満たしている場合、遺族年金を受け取ることができます。
今回改正があったのは、遺族厚生年金です。
遺族厚生年金年金は「亡くなった方」が次のいずれかに該当す(1・2は保険料納付などの要件を満たしていることも必要です)れば、その遺族が受け取ることができます。
- 現役会社員が死亡した
- 病気・けがで会社を退職後5年以内に死亡した
- 障害等級1級·2級の障害厚生年金を受給していた
- 保険料を納付・免除した期間等が合計25年以上ある
遺族年金の金額は厚生年金保険の加入期間や過去の年収によって変わりますが、厚生労働省の作成した例では、以下の設例で遺族年金額が1,050,800円になりました。

遺族厚生年金の見直しは2028年4月施行予定です。
改正により、女性の場合、施行直後に原則5年間の有期給付の対象となるのは、18歳年度末までのこどもがいない、2028年度末時点で40歳未満の人となります。一方男性の場合、新たに5年間の有期給付を受けられるようになるのは、18歳年度末までのこどもがいない60歳未満の人です。

なお、以下1~4に該当する方は、今回の見直しによって受ける影響はありません。
- 既に遺族厚生年金を受給している方
- 60歳以降に遺族厚生年金の受給権が発生する方
- 18歳年度末までのこどもを養育する間にある方の給付内容
- 2028年度に40歳以上になる女性
支給される有期給付の額は新たに加算(有期給付加算)が上乗せされ、現在の遺族厚生年金の額の約1.3倍となります。
また、5年間の有期給付の終了後も、障害状態にある方(障害年金受給権者)や、収入が十分でない方は、引き続き増額された遺族厚生年金を受給することができます(継続給付)。
さらに、単身の場合は、就労収入が月額約10万円(年間122万円)以下の方は、継続給付が全額支給されます。収入が増加するにつれて収入と年金の合計額が緩やかに増加するよう年金額が調整されるしくみとなります。遺族厚生年金の年金額にもよりますが、概ね月額20~30万円を超えると、継続給付は全額支給停止します。
なお、「122万円」は、2025年度税制改正を反映した地方税所得に基づくと132万円(見込み)。また、夫と死別した妻が所得に関する要件を満たして地方税法上の「寡婦」に該当する場合は、年間204万程度となります。
18歳年度末までのこどもがいる場合、こどもが18歳年度末になるまでは現行制度と同じであり、見直しの影響はありません。こどもが18歳になった後、さらに5年間は増額された有期給付+継続給付の対象となります。
なお、遺族基礎年金の「こどもがいる場合の加算額」が増額され年間約234,800円→281,700円となります。



