image119先日ストレスチェック項目等に関する専門検討会が、改正労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度の中間とりまとめ案が公表されました。当サイトでも「ストレスチェック制度」というキーワードでのアクセスが急増しており、関心の高さがうかがわれます。

そこで、今回は速報性を重視して、先日公表されたストレスチェック制度の具体的実施方法等を検討している専門検討会の「中間とりまとめ」の、しかも「案」の段階ですが、数回に分けて、その内容について触れ、方向性を探っていきたいと思います。

今日は、「ストレスチェックの実施方法」についてみていくことにしましょう。

まず、とりまとめ案では、ストレスチェックの実施者について、「医師、保健師のほかに、・・・現時点では、看護師、精神保健福祉士が想定されているが、現在国会で継続審議となっている公認心理師法案の状況等を踏まえる必要がある」とされています。

ちなみに公認心理師は、法案概要によれば、「保健医療、福祉、教育その他の分野において、心理学に関する専門的知識及び技術をもって」、たとえば「心理に関する支援を要する者の心理状態の観察、その結果の分析」、「心理に関する支援を要する者に対する、その心理に関する相談及び助言、指導その他の援助」をするものとされています。ただ、現在法案段階ですので、試験の実施等を考えると、公認心理師が実施者になるのは、少し先のことになるでしょう。

次に実施回数については、他の雑誌記事の予想通り、一般健康診断と揃える形で、「1年以内ごとに1回以上、実施することが適当である」とされています。なお、一般定期健康診断との関係については、「同時に実施することも可能とすることが適当」としています。ただし、ストレスチェックのテストは、労働者には検査を受ける義務がない(なお、就業規則をもっても強制できないという考え方が一般的です。)こと、また実施者の守秘義務について留意することとしています。

実施方法は、「調査票によることを基本とし、面談による方法を必須とはしないことが適当である」とされています。

ちなみに、インターネットやイントラネットなどのICTを活用したストレスチェックの実施も、一定の条件付で実施可能とすべきとされています。大企業ではこれができないと事務処理が相当煩雑になると予想されますので、当然と言えば当然でしょうね。「一定の条件」としては、次の事項が挙げられています。

  1. 事業者及び実施者において、個人情報の保護や改ざんの防止(セキュリティの確保)のための仕組みが整っており、その仕組みに基づいて実施者において個人の検査結果の保存が適切になされていること。
  2. 労働者以外にストレスチェックの結果を閲覧することのできる者の制限がなされている(実施者以外は閲覧できないようにされている)こと。
  3. 後述する「実施者の役割」が果たされること

そのほか、産業医の関与が望ましいことや、労働者に対しその目的や情報の取扱について事前に十分な説明と、理解を得ることが「重要」としています。後段は、労働者に検査を受ける義務がないことから、受診(検?)を促進するために必要であるということでしょう。

「実施者の役割」については、次のことが記載されています。

  • 事業者からの依頼に基づき、最低限、当該事業所におけるストレスチェックの企画及び結果の評価に関与する必要がある。
  • 企画に係る実施者の役割には、項目の選定を事業者と連携して行うことを含み、結果の評価に係る実施者の役割には、評価基準の設定・選定を事業者と連携して行うこと、および個人の結果の評価(ストレスチェック結果の点検、確認、面接指導対象者の選定等)を含む必要がある。

最後に、事業場の総合的なメンタルヘルス対策との連携については、ストレスチェックを、「総合的なメンタルヘルス対策の一環として位置付けることが適当」としています。そして、具体的には、「労働者に対するセルフケアに関する情報提供や保健指導、ストレスチェック結果の集団的分析に基づく職場改善の取組、職場改善に関する管理監督者向け研修等を含めた総合的な対応を行うことが望ましい」とされています。

少し誤解されている方もいるところなのですが、ストレスチェック制度は、うつ病などの精神疾患の早期発見を行うことを一義的な目的とした制度ではありません。セルフケア、つまり労働者自身のストレスへの気付きを促すこと、職場改善につなげていく一次予防を主な目的とした制度として新設されたものです。したがって、ストレスチェック制度とあわせて、労働者への情報提供や職場改善も同時にやってくれよと、そういう意味と理解すればよいでしょう。

もちろん、これらの取組みは従業員の健康に関する事項ですから、「衛生委員会で調査審議することが適当」であって、「ストレスチェックの実施率や実施方法、効果について、事業場内でPDCAサイクルで評価・改善を行うことが望ましい」とされることになります。

■関連リンク

第4回ストレスチェック項目等に関する専門検討会 資料(厚生労働省HP)

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