世界の労働基準監督署からVOL007:木更津労働基準監督署

自動車運転者の労働時間等の規制については、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」により、拘束時間、休息期間等について上限基準等が設けられ、その遵守を図られてきましたが、脳・心臓疾患による労災支給決定件数では、運輸業・郵便業が全業種において最も支給決定件数の多い業種(令和2年度:58件(うち死亡の件数は19件))となるなど、依然として長時間・過重労働が課題となっているなどの問題がありました。

さらに、平成30年に成立した働き方改革関連法では、新たに時間外・休日労働の上限が設けられ、自動車運転者についても、令和6年4月以降、時間外労働について、月45時間及び年360時間の限度時間並びに、臨時的特別な事情がある場合での年960時間の上限時間が適用されることとされました。

このような背景の下で、厚生労働省内の作業部会において改善基準告示及び関係通達の在り方について検討が行われ、先日報告書案が公開されました。そこで、今回は、そのうちタクシー、ハイヤー等に関する内容についてみていくことにしましょう。

(1)1か月の拘束時間について

1か月についての拘束時間は、「288時間」以下とされました。また、隔日勤務に就くものの1か月についての拘束時間は、「262時間」以下とし、地域的事情等がある場合において、労使協定により、年間6か月まで、1か月の拘束時間を「270時間」まで延長することができることとされました。

(2)1日及び2暦日の拘束時間、休息期間について

  1. 1日の拘束時間、休息期間
    • 1日(始業時刻から起算して24時間)の拘束時間は、「13時間」以下とし、拘束時間を延長する場合であっても、1日についての最大拘束時間は「15時間」とされました。この場合において、1日についての拘束時間が「14時間」を超える回数(※)をできるだけ少なくするよう努めるものとされました。
      (※)通達において、「1週間について3回以内」を目安として示すこととする。
    • 休息期間は、勤務終了後、継続11時間以上与えるよう努めることを基本とし、「継続9時間」を下回らないものとされました。
  2. 隔日勤務に就くものの2暦日の拘束時間、休息期間
    • 2暦日についての拘束時間は、「22時間」以下とし、この場合において、2回の隔日勤務(始業及び終業の時刻が同一の日に属しない業務)を平均し隔日勤務1回当たり「21時間」を超えないものとされました。
    • 勤務終了後、継続24時間以上の休息期間を与えるよう努めることを基本とし、「継続22時間」を下回らないものとされました。

(3)車庫待ち等の自動車運転者について

  1. 車庫待ち等の自動車運転者の拘束時間、休息期間
    • 車庫待ち等(顧客の需要に応ずるため常態として車庫等において待機する就労形態)の自動車運転者については、労使協定により、1か月の拘束時間を「300時間」まで延長することができることとされました。
    • 車庫待ち等の自動車運転者とは、常態として車庫待ち、駅待ち形態によって就労する自動車運転者であり、就労形態について以下の基準を満たす場合には、車庫待ち等に該当するものとして取り扱って差し支えないこととする。
      1. 事業場が人口30万人以上の都市に所在していないこと。
      2. 勤務時間のほとんどについて「流し営業」を行っている実態でないこと。
      3. 夜間に4時間以上の仮眠時間が確保される実態であること。
      4. 原則として、事業場内における休憩が確保される実態であること。
    • 車庫待ち等の自動車運転者については、次に掲げる要件を満たす場合、1日の拘束時間を「24時間」まで延長することができる。
      1. 勤務終了後、「継続20時間以上」の休息期間を与えること。
      2. 1日の拘束時間が「16時間」を超える回数が1か月について7回以内である こと。
      3. 1日の拘束時間が18時間を超える場合には、夜間に4時間以上の仮眠時間を与えること。
  2. 車庫待ち等の自動車運転者で隔日勤務に就くものの拘束時間、休息期間
    • 車庫待ち等の自動車運転者については、労使協定により、1か月の拘束時間を270時間まで延長することができる。
    • 車庫待ち等の自動車運転者については、次に掲げる要件を満たす場合、1か月の拘束時間については上記の時間に10時間を加えた時間まで、2暦日の拘束時間については24時間まで延長することができることとする。
      1. 夜間に4時間以上の仮眠時間を与えること。
      2. 2暦日の拘束時間を24時間まで延長するのは、1か月7回以内とすること。

(4)例外的な取扱いについて⇒省略

(5)休日労働について

休日労働は定める2週間について1回を超えないものとし、当該休日労働によって、上記に拘束時間の限度を超えないものとされました。

(6)ハイヤーについて

ハイヤーに乗務する自動車運転者の時間外労働協定の延長時間は、1か月「45時間」、1年360時間を限度とし、臨時的特別な事情がある場合であっても、1年について960時間を超えないものとし、労働時間を延長することができる時間数又は労働させることができる休日の時間数をできる限り少なくするよう努めるものとされました。なお、必要な睡眠時間が確保できるよう、勤務終了後に一定の休息期間を与えるものとされました。

第8回労働政策審議会労働条件分科会自動車運転者労働時間等専門委員会資料(厚生労働省HP)