賃金の支払方法については、従来から、通貨のほか、労働者の同意を得た場合には、銀行等の預貯金口座への振込みや一定の証券総合口座への払込みによることができたところ、昨今、資金移動業者の口座への資金移動を給与受取に活用するニーズも一定程度見られることから、労働者の同意を得た場合に、一定の要件を満たす「指定資金移動業者」口座への資金移動による賃金支払をできることとする改正が行われました。

使用者は、労働者の同意を得た場合には、賃金の支払方法として、法令の定める一定の要件を満たすものとして厚生労働大臣の指定を受けた資金移動業者(指定資金移動業者)のうち、労働者が指定する者の第二種資金移動業に係る口座への資金移動によることができることとされました。

なお、使用者が、指定資金移動業者口座への資金移動による賃金支払を行う場合には、労働者が預貯金口座への振込みまたは証券総合口座への払込みによる賃金支払を選択することができるようにするとともに、労働者に対し、下の例のような同意書等を用いる等により指定資金移動業者口座に関する必要な事項を説明した上で、労働者の同意を得なければならないとされました。

具体的には、以下の内容を含む内容を説明することとされました。

第1に、資金移動業者は、預貯金や定期積金等を受け入れていないこと。併せて、指定資金移動業者口座への資金移動を希望する賃金の範囲およびその金額(希望額等)は、各労働者において、その利用実績や利用見込みを踏まえ、為替取引(送金や決済等)に用いられる範囲内に設定する必要があること。また、希望額等の設定に当たっては、指定資金移動業者が設定している口座残高上限額(100万円以下)および指定資金移動業者が1日当たりの払出上限額を設定している場合には、その額以下に設定する必要があります。

第2に、指定資金移動業者の破綻時には、保証委託契約等を結んだ保証機関により、労働者と保証機関との保証契約等に基づき、労働者に口座残高の弁済が行われること。

労働者の意思に反して権限を有しない者の指図が行われる等により指定資金移動業者口座の資金が不正に出金等された際に、労働者に過失がない場合には損失額全額が補償されること。また、労働者に過失がある場合には個別対応を妨げるものではないが、損失を一律に補償しないといった取扱いとはされないこと。なお、労働者の親族等による払出の場合、労働者が虚偽の説明を行った場合等においては、この限りではないこと。損失発生日から一定の期間内に労働者から指定資金移動業者に通知することを補償の要件としている場合には、当該期間は少なくとも損失発生日から30日以上は確保されていること。

第3に、払出(現金化)の手段については、ATM等の利用や預貯金口座への出金等の通貨による受取が可能となる手段を通じて、少なくとも毎月1回は労働者に手数料負担が生じることなく指定資金移動業者口座から払出ができること。

第4に、口座残高については、口座に係る資金移動が最後にあった日から少なくとも10年間は債務が履行できるようにされていること。

なお、労働者への説明については、指定資金移動業者に委託することも認められるものの、労働者の同意については、使用者が得る必要があります。

労働者の「同意」は、書面又は電磁的記録によるものとし、労働者による「指定」とは、労働者本人名義の指定資金移動業者口座を指定するとの意味であって、使用者または委託された指定資金移動業者が、必要な事項を説明した上で、この指定が行われれば、同意を強制された等特段の事情がない限り同意が得られているものであること。また、「資金移動」は、賃金の全額が所定の賃金支払日に払い出し得るように行われることを要するものであること。

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参考リンク

労働基準法施行規則の一部を改正する省令の公布について(厚生労働省HP、PDF)