厚生労働省HPより

「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス・事業者間取引適正化等法)が成立しました。本法律は、個人で働くフリーランスに業務委託を行う発注事業者に対し、業務委託をした際の取引条件の明示、給付を受領した日から原則60日以内での報酬支払、ハラスメント対策のための体制整備等が義務付けられることとなり、公布の日から起算して1年6か月を超えない範囲内において政令で定める日に施行することとされています。

今回は、この概要についてみておきましょう。

初めに本法の対象となる当事者・取引の定義は次の通りです。

  1. 「特定受託事業者」とは、業務委託の相手方である事業者であって従業員(短時間・短期間等の一時的に雇用される者は含みません。)を使用しないものをいいます。
  2. 「特定受託業務従事者」とは、特定受託事業者である個人および特定受託事業者である法人の代表者をいいます。
  3. 「業務委託」とは、事業者がその事業のために他の事業者に物品の製造、情報成果物の作成又は役務の提供を委託することをいいます。
  4. 「特定業務委託事業者」とは、特定受託事業者に業務委託をする事業者であって、従業員を使用するものをいいます。

以上の用語に注意しながら、「特定受託事業者」に係る取引の適正化についてみていきましょう。

第1に、「特定受託事業者」に対し業務委託をした場合は、特定受託事業者の給付の内容、報酬の額等を書面又は電磁的方法により明示することが義務付けられました。つまり、いわゆるフリーランスに業務委託する場合に仕事内容、報酬等を書面等で明示することが義務付けられました。なお、従業員を使用していない事業者が特定受託事業者に対し業務委託を行うときについても同様とされています。

第2に、「特定受託事業者」の給付を受領した日から60日以内の報酬支払期日を設定し、支払わなければならないとされました。再委託の場合には、発注元から支払いを受ける期日から30日以内とされています。

第3に、特定受託事業者との業務委託(政令で定める期間以上のもの)に関し、次の1~5の行為が禁止されました。また、6および7の行為によって特定受託事業者の利益を不当に害してはならないものとされました。

  1. 特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく受領を拒否すること
  2. 特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく報酬を減額すること
  3. 特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく返品を行うこと
  4. 通常相場に比べ著しく低い報酬の額を不当に定めること
  5. 正当な理由なく自己の指定する物の購入・役務の利用を強制すること
  6. 自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること
  7. 特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく内容を変更させ、又はやり直させること

次に、特定受託業務従事者の就業環境の整備関する規制です。

  1. 広告等により募集情報を提供するときは、虚偽の表示等をしてはならず、正確かつ最新の内容に保たなければならないこと
  2. 特定受託事業者が育児介護等と両立して業務委託(政令で定める期間以上のもの。以下「継続的業務委託」)に係る業務を行えるよう、申出に応じて必要な配慮をしなければならないこと
  3. 特定受託業務従事者に対するハラスメント行為に係る相談対応等必要な体制整備等の措置を講じなければならないこと
  4. 継続的業務委託を中途解除する場合等には、原則として、中途解除日等の30日前までに特定受託事業者に対し予告しなければならないこと

フリーランスのハラスメント行為への対応が求められているところは注目点といえます。

違反した場合等の対応では、公正取引委員会、中小企業庁長官または厚生労働大臣は、特定業務委託事業者等に対し、違反行為について助言、指導、報告徴収・立入検査、勧告、公表、命令をすることができるものとされました。

命令違反及び検査拒否等に対し、50万円以下の罰金に処されるものとされています(法人両罰規定あり)。

国が行う相談対応等の取組として、特定受託事業者に係る取引の適正化および特定受託業務従事者の就業環境の整備に資するよう、相談対応などの必要な体制の整備等の措置を講ずるものとされました。

お問い合わせはお気軽に。043-245-2288

参考リンク

フリーランスとして業務を行う方・フリーランスの方に業務を委託する事業者の方等へ(厚生労働省HP)