厚生労働省が労働基準監督署が監督指導を行った結果、平成31年度・令和元年度に、不払だった割増賃金が支払われたもののうち、支払額が1企業で合計100万円以上となった事案を公表しました。是正結果(平成31年度・令和元年度)のポイントは次の通りです。
- 是正企業数 1,611企業(前年度比 157企業の減)
うち、1,000万円以上の割増賃金を支払ったのは、161企業(前年度比 67企業の減) - 対象労働者数 7万8,717人(同3万9,963人の減)
- 支払われた割増賃金合計額 98億4,068万円(同26億815万円の減)
- 支払われた割増賃金の平均額は、1企業当たり611万円、労働者1人当たり13万円
監督指導の対象となった事例としては、たとえば次のようなものがあります。
- 「タイムカード打刻前の朝礼と車両点検に対して割増賃金が支払われない」との情報を基に、労基署が立入調査を実施。
- 産業廃棄物の収集車の運転者に対し、始業前の朝礼への出席と車両点検を義務づけていたほか、労働時間の算定の際に、1日ごとに30分単位で切り捨て計算を行っており、賃金不払残業の疑いが認められたため、実態調査を行うよう指導。
会社の改善策は、産業廃棄物の収集車の運転者に対し、朝礼と車両点検に要した時間、切り捨てされていた時間について実態調査を行った上で、不払となっていた割増賃金を支払ったうえで、次の取組を実施したものです。
- 役員から全ての労働者に対して、労基署の指導内容やコンプライアンスの重要性を説明し、「労働時間適正把握ガイドライン」に基づく労働時間の適正な把握について教育研修を行った。
- 30分未満の労働時間を切り捨てる方式を廃止したほか、朝礼及び車両点検については、始業後に実施することとした。
- 労働時間の適正な管理を徹底するため、タイムカードの記録と車両の運行記録などの記録に大幅なかい離があった場合には、かい離の原因について聴取を行うこととした。
打刻前の朝礼は、不払い残業の指導としては典型的なものといえます。このような事例も参考に、未払い残業が発生しないよう対応が求められます。
参考リンク
監督指導による賃金不払残業の是正結果(平成31年度・令和元年度)(厚生労働省HP)