世界のハローワークからVOL020:ハローワーク足利

「加速する社会・経済の変化の中での労働政策の課題」をテーマに議論を行っていた労働政策審議会労働政策基本部会が取りまとめた報告書が公表されました。

本報告書では、「社会経済の現状と課題」および「働き方の現状と課題」を確認したうえで、「今後の労働政策の方向性について」で、次のような内容を示しました。

第1に、企業に求められる対応です。ここでは、リスキリングの必要性を明確にした上で、経営者、マネージャー、現場労働者の全てのレベルで、リスキリングを含めた能力開発に主体的に取り組んでいくための動機付け・環境整備が必要であること、また、中間管理職のマネジメント業務が大きく変化・増加(ワークライフバランスの確保、エンゲージメントの向上)していることから、人事部で、管理職向けのマネジメント研修(1on1ミーティング)の実施やその見直し等、管理職の業務負担の軽減を図ることが重要であるとしています。

第2に、労働者に求められる対応として、多くの変化が短期間に起こる現状では、過剰に変化を恐れるのではなく、変化を前向きに捉えて対応していくことが求められるとしました。そのうえで、報告書では、長期雇用を前提とした企業では、企業が広い人事権を持って人事異動やOJT中心の人材育成を実施しており、企業との長期的な関係により、労働者が自律的にキャリア形成していくという意識が薄れる可能性もあることから、労働者自らが自律的にキャリア形成や学びを深めていくことが必要としました。

第3に、労働政策において今後検討すべき対応として、多様な人材が能力を発揮できるよう、女性や高齢者などの働き方に中立的な税制・社会保障制度の構築や、雇用によらない働き方など様々な働き方の人を重層的なセーフティネットに組み入れていくことが課題としました。この内容は、健康保険の被扶養者制度、社会保険の適用拡大などに繋がる内容だと思われます。

また、自発的に労働移動を行う労働者の転職の参考となるよう、①労働市場の見える化(職場情報・職業情報)、②異業種間でも業務の親和性がある仕事の事例の積極的周知広報、③ハローワークサービスのデジタル化による、オンラインサービスやキャリアコンサルティング機能の充実など在職者向け支援の強化、等の転職しやすい環境整備(労働市場の基盤整備)を進めていくべきとされました。そして、今は労働政策の大きな転換期にあり、従来の「安全・安心」を重視する対応に加え、「労働市場のセーフティネットを整備しつつ、労働者のスキルアップ・向上を目指す」ことを重視していくべきであることが述べられています。

最後に、第4に、社会全体に求められる対応(一人ひとりが自律的にキャリアについて考える)として、一人ひとりの労働者が自律的にキャリアについて考える方策を社会全体で危機感を持って検討していくことが必要であり、リスキリングについての支援も、個人への直接支援が重要であることが示されました。この部分は、今後教育訓練給付金の充実につながる可能性があります。

このように、本報告書は具体的な施策への言及は少ないものの、今後の労働政策を探るうえでは有用な内容です。

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参考リンク

労働政策審議会労働政策基本部会 報告書 ~変化する時代の多様な働き方に向けて~(厚生労働省HP)