世界の年金事務所からVOL15:千代田年金事務所

国民年金および厚生年金の財政検証の結果が社会保障審議会年金部会で示されました。

財政検証は、よく「定期健康診断」にたとえられます。その概要は、少なくとも5年ごとに、①財政見通しの作成、および②給付水準の自動調整(マクロ経済スライド)の開始・終了年度の見通しの作成を行い、年金財政の健全性を検証するものです。また、次の財政検証までに所得代替率が50%を下回ると見込まれる場合には、 給付水準調整の終了その他の措置を講ずるとともに、給付および負担の在り方につ いて検討を行い、所要の措置を講ずるものとされています。

今回の財政検証のポイントは次の通りです。

  • 経済成長と労働参加が進むケース(ケースⅠ~Ⅲ)では、①マクロ経済スライド終了時に、所得代替率は50%以上を維持、②マクロ経済スライド調整期間において、新規裁定時の年金額は、モデル年金 ベースでは物価上昇分を割り引いても増加
  • 経済成長と労働参加が一定程度進むケース(ケースⅣ・Ⅴ)では、①2040年代半ばに所得代替率50%に到達する(その後も機械的に調整した場合、マクロ経済スライド終了時に、所得代替率は40%台半ば)、②マクロ経済スライド調整期間において、新規裁定時の年金額は、モデル年金 ベースでは物価上昇分を割り引いても概ね横ばいないし微減

ところで、今回の財政検証では、オプション試算が行われました。今後の政策動向をうかがう上では、こちらも重要です。

オプション試算の1つめは、被用者保険の更なる適用拡大を行った場合です。試算の結果、 適用拡大は、所得代替率や、基礎年金の水準確保に 効果が大きいことがわかりました。すでに健康保険・厚生年金保険の適用拡大に向けて議論が進められていますが、今回の結果も影響するものと思われます。

2つ目のオプション試算は、 保険料拠出期間の延長と受給開始時期の選択に関するものです。この結果、就労期間・加入期間を延長することや、繰下げ受給を選択することは、年金の水準確保に効果が大きいとされています。

このように、今後の社会保険制度改革においては、被用者保険の適用拡大や保険料拠出期間の拡大などがポイントになりそうです。

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参考リンク

第9回社会保障審議会年金部会(厚労省HP)