今回の記事、ざっくり言うと・・・

  • 厚生労働省が「組織の変動に伴う労働関係に関する対応方策検討会」の報告書を公表した
  • 会社法等の法整備の状況や組織の変動に係る裁判例の蓄積等も踏まえ、承継法施行規則及び承継法指針の改正等により講ずるべき措置を示している
  • 事業譲渡等に係る新たな指針を策定し、会社が事業譲渡を行う際の労働者との手続や労働組合等の間の集団的手続等に関し、留意すべき事項を示すこととしている

 

DSC_0430厚生労働省が「組織の変動に伴う労働関係に関する対応方策検討会」の報告書を公表しました。

この検討会では、会社分割や事業譲渡といった組織の変動について、会社法等の法整備及び組織の変動に係る裁判例の蓄積等を踏まえ、また、先日公開された「組織の変動に伴う労働関係に関する研究会」の報告書も参考としつつ、承継法に基づく施行規則および指針の改正、ならびに事業譲渡および合併に関する新たな指針の策定等により、報告書に掲げる措置を講ずることが適当であるとし、施行規則・指針の改正案もあわせて記載されています。

1 会社分割について(承継法施行規則及び承継法指針の改正等)

(1)会社法の制定による会社分割制度の改正等を踏まえた対応

  • 承継法上の主従事労働者の判断基準は、労働者保護の観点から、引き続き「事業」単位で判断することとし、併せて、「事業」の考え方を明らかにすること
  • 5条協議(労働者との個別協議)の対象に、承継される不従事労働者を加えること
  • 債務の履行の見込みについて、7条措置(労働者全体の理解と協力を得る措置)及び5条協議で説明し、理解を得ることについて、周知を行うこと
  • 債務の履行の見込みのない分割に伴う労働者の承継等が生じうることから、会社制度の濫用に対する法人格否認の法理の適用の可能性等について周知、紹介すること

(2)5条協議の法的意義

最高裁判決で示された5条協議の法的意義を周知すること

(3)転籍合意により労働契約を移転する場合

転籍合意により労働契約を移転する場合であっても、承継法上の手続は省略できないこと等を周知すること、労働者への通知事項に会社分割による労働条件の承継に関することを含めること

(4)労使間の協議等に関する留意事項

  • 5条協議及び7条措置に関するさらなる周知とともに、団体交渉権や団体交渉に応ずべき使用者に関する裁判例等の考え方等について周知・紹介を行うこと
  • 労働協約の承継の取扱いや、異議申出に対する不利益取扱いの禁止について周知を行うこと

2 事業譲渡等について(事業譲渡等指針の策定等)

(1)事業譲渡

  • 労働者との間の手続等について、以下のことに留意すべきことを周知すること
  1. 労働契約の承継には労働者の個別の同意が必要であること、その際、事業譲渡に関する全体の状況や譲受会社等の概要等を十分に説明することが適当であること、労働条件の変更についても労働者の同意を得る必要があること等
  2. 労働契約の承継への不同意のみで解雇が可能となるものではない等、解雇権濫用法理等を踏まえた事 項
  3. 労働者の選定について労働組合員に対する不利益取扱い等を行ってはならないことや、裁判例における労働契約の承継の有無や労働条件の変更に関する個別の事案に即した救済の状況

ロ  労働組合等との間の集団的手続等について、以下のことを周知等すること

  1. 過半数組合等との協議等の方法によって、労働者の理解と協力を得るよう努めること、その際、事業譲渡を行う背景・理由、債務の履行の見込みに関する事項等を対象事項とすること
  2. 団体交渉権や団体交渉に応ずべき使用者に関する裁判例等の考え方等(譲受先を使用者として認めた命令例も含む。)

(2)合併

合併により消滅する会社等の労働者の労働契約は存続会社等に包括承継されること、このため、労働条件もそのまま維持されることを周知すること

厚生労働省は、本報告書を踏まえ、今後、労働関係承継法に基づく省令や告示の改正、事業譲渡及び合併に係る指針(告示)の策定等を実施するとしています。

参考リンク

組織の変動に伴う労働関係に関する対応方策検討会 報告書取りまとめについて(厚生労働省HP)

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