世界の労働基準監督署からVOL017:三田労働基準監督署

前回取り上げた通達では、副業・兼業の場合の「簡便な労働時間管理(管理モデル)」という仕組みが認められています。これは、例えば、副業・兼業の日数が多い場合や、自らの事業場及び他の使用者の事業場の双方において所定外労働がある場合等においては、労働時間の申告等や通算管理において、労使双方に手続上の負担が伴うことが考えらるため、その負担を軽減するためのものです。

管理モデルは、副業・兼業の開始前に、当該副業・兼業を行う労働者と時間的に先に労働契約を締結していた使用者(以下「使用者A」)での法定外労働時間と、時間的に後から労働契約を締結した使用者(以下「使用者B」)での労働時間(所定労働時間および所定外労働時間)とを合計した時間数が単月 100 時間未満、複数月平均 80 時間以内となる範囲内において、各々の使用者の事業場における労働時間の上限をそれぞれ設定し、各々の使用者がそれぞれその範囲内で労働させる仕組みです。

また、使用者AはAの事業場における法定外労働時間の労働について自らの事業場における 36 協定の延長時間の範囲内とし、使用者BはBの事業場における労働時間の労働について自らの事業場における 36 協定の延長時間の範囲内とし、それぞれ、割増賃金を支払います。これにより、使用者A・Bは、副業・兼業の開始後においては、それぞれあらかじめ設定した労働時間の範囲内で労働させる限り、他の実労働時間の把握を要することなく法を遵守することが可能となるというわけです。

管理モデル導入にあたっては、まず、一般的には、副業・兼業を行おうとする労働者に対して使用者Aが管理モデルにより副業・兼業を行うことを求め、労働者と労働者を通じて使用者Bがこれに応じることによって導入されることが想定されます。

次に、Aでの 1 か月の法定外労働時間とBでの1か月の労働時間とを合計した時間数が単月100時間未満、複数月平均 80 時間以内となる範囲内において、それぞれの事業場における労働時間の上限をそれぞれ設定します。なお、月の労働時間の起算日がAとBとで異なる場合には、AとBは、それぞれの事業場の労働時間制度における起算日を基に、そこから起算した1か月における労働時間の上限をそれぞれ設定することとして差し支えないとされています。

このとき、管理モデルの導入後に、Aにおいて導入時に設定した労働時間の上限を変更する必要が生じた場合には、あらかじめ労働者を通じて使用者Bに通知し、必要に応じてBにおいて設定した労働時間の上限を変更し、これを変更することは可能ですが、あらかじめ、変更があり得る旨を留保しておくことが望ましいとされています。

そして、AはAでの法定外労働時間について、BはBの事業場における労働時間の労働について、それぞれ割増賃金を支払います。Aが、法定外労働時間に加え、所定外労働時間についても割増賃金を支払うこととしている場合には、Aは、Aでの所定外労働について割増賃金を支払うことになります。

なお、Aでの法定外労働時間の上限にBでの労働時間を通算して、自らの事業場の労働時間制度における法定労働時間を超える部分が1か月について 60 時間を超えた場合には、その超えた時間の労働のうち自らの事業場において労働させた時間については、5割以上の率としなければなりません。

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参考リンク

副業・兼業の場合における労働時間管理に係る労働基準法第38条第1項の解釈等について(令和2年9月1日基発0901第3号、厚生労働省HP)