世界の労働基準監督署からVOL017:三田労働基準監督署

労働政策研究・研修機構(JILPT)が「労働者性に係る監督復命書等の内容分析」を公開しました。この報告書は、労働基準監督行政が作成した監督復命書及び申告処理台帳のうち、その中に「労働者性」「個人事業主」という文言の含まれているものの提供を受け、その内容分析を行ったものです。

調査対象のうち全122件のうち、建設業が54件で44.3%ともっとも多く、「一人親方が 56 人で 45.9%と半数近くを占め、今日においても建設業を中心とする一人親方が労働者性に係る問題の中心であることを物語っている」としています。そのほか、飲食店・接客娯楽業が16件で13.1%、運輸業が11件で9.0%でした。運輸業も一人親方が多い業種ですが、思ったよりも少ないという印象です。

次に、事案の内容は監督復命書の事案では半数の40件が労働安全衛生に係る事案とされており、労働災害が監督の端緒となっていることが伺われます。一方、申告処理台帳の事案では賃金未払い事案が圧倒的多数に上っています。

労働者性の判断状況は、全122件のうち労働者性ありとする事案が 27 件(22.1%)、労働者
性なしとする事案が 37 件(30.3%)、労働者性の判断に至らなかった事案が 58 件(47.5%)と
なっており、労働者性の判断の難しさが表れているように思われます。また、監督復命書の事案では労働者性の有無について6割以上判断を下しているのに対して、申告処理台帳では逆に 6 割以上の事案で労働者性の判断に至っていないという傾向も指摘されています。この点について、著者は、「実際に災害が発生している中で、労働安全衛生上の是正勧告や指導を行う関係上、乏しい情報下であっても労働者性の判断を迫られることが多いのに対して、申告処理台帳の事案は本来民事
上の問題である賃金未払い事案が大部分であり、その後裁判所に労働者性の判断を求めて提訴する可能性も十分にある中で、乏しい情報下で安易に労働者性の判断に踏み切れないという事情が考えられる」とした見解を示しています。

もっとも、労働者性が強い場合には是正指導が行われている点には注目するべきでしょう。たとえば、「労働者は男性マネージャー1 名だけで、接客するキャスト 6-7 名は全員外注としているが、契約書はない。勤務は 21 時-24 時半で、報酬は時給 2300 円とドリンクパックと指名料。キャスト同士のトラブルで契約解除。業務指示に対する諾否の自由があまりなく、報酬も時給制で、一定の労働者性が認められると伝え、予告手当の支払いで終了」としたものがあります。

このように労働契約かどうかは実態によって判断されるということに留意すべきです。

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参考リンク

労働者性に係る監督復命書等の内容分析(JILPTのHP)