今回の記事をざっくり言うと・・・

  • 改正労基法案には、年次有給休暇の付与日数が 10 日以上である労働者を対象に、有給休暇の日数のうち年5日については、使用者が時季指定しなければならないとする規定が盛り込まれる
  • 付与にあたっては、付与時季に関する意見聴取や有給管理簿の作成・3年間の保存が義務付けられる見込み

image1372月17日に、労働政策審議会に諮問した「労働基準法等の一部を改正する法律案要綱」について、答申が行われました。

いずれも「おおむね妥当」と了承されたものの、労働基準法の改正については、原案が修正された上で、企画業務型裁量労働制と高度 プロフェッショナル制度について、労働者代表委員による意見が併記されている異例なものとなっています。今後、国会での審議を経ることになりますが、原案通り通過するかどうかは予断を許さない状況です。

さて、このような状況ではありますが、引き続き「今後の労働時間法制等の在り方について」を元に、今回は有給休暇の取得について、会社が取得時季を指定する制度を中心に紹介しましょう。

今回の改正法案で盛り込まれるのは、「年次有給休暇の付与日数が 10 日以上である労働者を対象に、有給休暇の日数のうち年5日については、使用者が時季指定しなければならないことを規定すること」です。つまり、本来労働者の権利(ゆえに行使するもしないも労働者次第)である年休の取得を、付与日数が10日以上である場合には、5日分の取得については会社に責任を取らせようというものです。

ただし、「労働者が時季指定した場合や計画的付与がなされた場合、あるいはその 両方が行われた場合には、それらの日数の合計を年5日から差し引いた日数につい て使用者に義務づける」とされています。したがって、対象となる労働者が自主的に5日以上の年休を取得すれば、会社の時季指定の義務からは解放されるものとなります。

なお、労基法施行規則において、①年休権を有する労働者に対して時季に 関する意見を聴くものとすること、②時季に関する労働者の意思を尊重するよう努 めなければならないこと、②年次有給休暇の管理簿の作成を義務づけるとともに、これを3年間確実に保存しなければならないことが定められる予定です。

これらの対応については、人手不足に苦しむ中小企業には頭を抱えることになるように思われます。安直(?)には、夏季休暇や年末年始休暇を計画付与日にして労使協定を締結することが考えられますが、これらが就業規則で「休日」と定められている場合、休日を休暇日に変更することは、休日の減少といった不利益変更の問題が生じることになるでしょう。

素朴な疑問としては、年休を付与しないまま所定労働日が残り5日となった場合に、自動的に残った労働日が年休取得日になるのかということですが、この辺は研究者などに考えてもらいましょう。

※本記事内容は、法改正の前段にあたる建議に基づくものです。したがって、今後の法案作成や国会の議論を通じて内容が変更される場合があることをご了解ください。

■関連リンク

「労働基準法等の一部を改正する法律案要綱」の答申(厚生労働省HP)

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