世界の労働基準監督署からVOL012:新庄労働基準監督署

厚生労働省内に設置されている労働政策審議会労働条件分科会が「今後の労働契約法制及び労働時間法制の在り方について」を公表しました。本報告書の内容は、次の労働契約法・労働基準法の改正内容となる可能性が高いため、何回かに分けて詳しく見ていきたいと思います。

はじめに、無期転換ルールに関するものについてです。

無期転換ルールについては、転換を希望する労働者の申込機会の確保のため、「一層の周知徹底に取り組む」ほか、「無期転換申込権が発生する契約更新時に、無期転換申込機会と無期転換後の労働条件について、労働基準法の労働条件明示の明示事項に追加すること」、さらに「労働基準法の労働条件明示において書面で明示することとされているものは、無期転換後の労働条件明示にあたっても書面事項とすること」が適当とされました。この改正が実現した場合、実務上の対応が必要となるため、注意しなければなりません。

無期転換ルールに関してもう一つ注目すべきなのが、「更新上限の有無及びその内容について、労働基準法の労働条件明示事項に追加する」こと、さらに、告示において、「最初の契約締結より後に、更新上限を新たに設ける場合又は更新上限を短縮する場合には、その理由を労働者に事前説明するものとすること」が適当とされました。特に、後者は告示事項ですが、更新時に新たに更新上限を設けることについて、その理由を説明することが求められることになります。その内容は「経営上の必要性」など抽象的な内容ではなく、より具体的なものが求められることになるでしょう。

次に、労働契約関係の明確化についてみると、「労働基準法の労働条件明示事項に就業場所・業務の変更の範囲を追加することが適当」とされた点が、実務上インパクトが大きいと思われます。もっとも、全国に支店がある企業でそのすべては網羅的に示すことはおよそ現実的ではないと考えられます。そのため、就業規則の関係条文の明示なども認められるのではないでしょうか(その場合、転勤規程など別規程化することなどもありえるでしょう)。

また、「労働条件明示のタイミングに、労働条件の変更時を追加することを引き続き検討すること」も気になりますが、その書きぶりから、ただちに義務化されるものではないと思われます。

このほか、「就業規則を備え付けている場所等を労働者に示すこと等、就業規則を必要なときに容易に確認できるようにする必要があることを明らかにすること」が適当とされた点については、どのレベルで求められるのか不明ですが、監督官による指導等が強化される可能性はあるかもしれません。

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参考リンク

労働政策審議会労働条件分科会報告「今後の労働契約法制及び労働時間法制の在り方について(報告)」を公表します(厚生労働省HP)