世界の労働基準監督署からVOL017:三田労働基準監督署

すでに公開されていた「令和元年台風第19号による被害に伴う労働基準法や労働契約法に関するQ&A」が10月23日版に更新されました。いくつか取り上げたいと思います。

Q4-3 被災地への義援金を社内で募る場合、募金額を各労働者から聞いて取り まとめ、賃金から控除することは問題ないでしょうか 。

A4-3 賃金からの控除については、…①法令に別段の定めがある場合②事業場の労働者の過半数で組織する労働組合等との書面による協定がある場合に限り、賃金から一部の金額を控除することが認められています。上記②の労使協定により控除できるのは、社宅や寮の費用など、労働者が当然に支払うべきことが明らかなものとされています。労働者が自主的に募金に応じる場合は、一般的にはその労働者が当然に支払うべきことが明らかなものと考えられるため、事業場の労働者の過半数で組織する労働組合等との書面による協定を締結し、その労働者の賃金から募金額を控除することは可能です。なお、②の労使協定があったとしても、募金に応じる意思がない労働者の賃金から義援金として一律に控除することは認められず、労働基準法違反となりますので注意が必要です。

このQ&Aは、賃金控除協定に関するもので、「労働者が募金に応じる場合」については、労使協定により、賃金から募金額を控除しても違法とはならないとしています。

Q5-1 労働基準法第25条の「災害」には、今回の台風による災害も含まれるでしょうか。

A5-1 労働基準法第25条では、労働者が、出産、疾病、災害等の非常の場合の費用に充てるために請求する場合は、賃金支払期日前であっても、使用 者は、既に行われた労働に対する賃金を支払わなければならないと定められています。 ここでいう「疾病」、「災害」には、業務上の疾病や負傷のみならず、業務外のいわゆる私傷病に加えて、洪水等の自然災害の場合も含まれると解されています。 このため、労働基準法第25条の「災害」には今回の台風による災害も含まれると考えられます。

Q5-2 労働者又はその家族が被災し、又は居住地区が避難地域に指定される等により、住居の変更を余儀なくされる場合の費用は、労働基準法第25条 の「非常の場合の費用」に該当するでしょうか。

A5-2 ご質問にあるような費用は、災害によるものとして、労働基準法第25 条の「非常の場合の費用」に該当すると考えられます

今回のような災害では「非常時払い」の請求があるかもしれません。上記のように、請求があった場合には応じることが労基法上義務付けられています。なお、支払い義務があるのは「既に行われた労働に対する賃金」ですので、まだ働いていない分の賃金については、支払う必要はありません。

Q6-1 今回の台風による水害等により、事業場又は関連事業場が被害を受け、当初の予定どおり1年単位の変形労働時間制を実施できなくなった場合、労使協定を労使で合意解約し、締結し直すことは可能でしょうか。また、1年単位の変形労働時間制を採用している事業場において休日の振替はどのような場合に認められるのでしょうか。

A6-1 …今回の台風による水害等により、…当初の予定どおりに1年単位の変形労働時間制を実施することが困難となる場合が想定されます。1年単位の変形労働時間制は、対象期間中の業務の繁閑に計画的に対応するために対象期間を単位として適用されるものであるので、労使の合意によって対象期間の途中でその適用を中止することはできないと解されています。しかしながら、今回の台風による被害は相当程度に及んでおり、当初の予定どおりに1年単位の変形労働時間制を実施することが企業の経営上著しく不適当と認められる場合には、労使でよく話し合った上で、1年単位の変形労働時間制の労使協定について、労使で合意解約をする、あるいは協定中の破棄条項に従って解約し、改めて協定し直すことも可能と考えられます。…(以下略)

1年単位の変形労働時間制について、今回のような非常事態においては合意解約、または協定の条項に従って解約・再締結を可能とするものです。

今回のような非常時には、様々な問題が発生します。更新されたQ&Aも必要に応じて参照するようにしてください。

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参考リンク

令和元年台風第 19 号による被害に伴う労働基準法や労働契約法に関するQ&A (厚労省HP、PDF)