image147今週のダイヤモンドは労基署特集でしたね。

本特集でも紹介されていましたが、国税専門官の5%の人員(3,198人)しかおらず、全国428万ある事業場全て回るとすると単純計算で25年に1回しか来ない労働基準監督官ですが、実際には重点業種などが設定され、同じ事業場に複数回臨検(労働基準監督官による立ち入り調査)が実施されることもあります。

たとえば、重点業種としてここ数年挙がっているのが(本特集でも取り上げられていましたが)運送業界です。

今日は、これに関連するニュースとして、平成25年度の自動車運転者を使用する事業場に対する監督指導や送検の状況について取り上げましょう。

平成25年の監督指導や送検などの概要は、次のとおりです。

  • 監督指導を行った事業場は4 ,279事業場。そのうち、労働基準関係法令違反が認められたのは、3,513事業場(82.1%)
  • 改善基準告示違反が認められたのは、2,510事業場(全体の58.7%)
  • 主な労働基準関係法令違反事項は、多い順に ⑴ 労働時間(56.6%) ⑵ 割増賃金(24.5%) ⑶ 休日(4.7%)
  • 主な改善基準告示違反事項は、多い順に ⑴ 最大拘束時間(47.0%) ⑵ 総拘束時間(36.3%) ⑶ 休息期間(32.7%)。
  • 重大または悪質な労働基準関係法令違反により送検を行ったのは69件。

具体的な指導事例としては、次のようなものがあります(厚生労働省作成資料より。一部修正)。

特定の荷主から頻繁に注文される臨時の発注業務に対応するため、漫然と配車計画を組んだ結果、特定のトラック運転者の拘束時間が長くなる勤務シフトが組まれていた。

このため、時間外労働・休日労働に関する協定(以下「36 協定」という。)で定めた上限時間である月 93 時間を超える月約 100 時間の時間外労働が認められ、また、1か月の総拘束時間が最長で約 360 時間に上っていたため、労働基準法違反及び改善基準告示違反について、是正を指導した。

監督官による指導の結果、特定の自動車運転者に仕事が偏らないよう、荷主とも調整の上、配車計画と勤務シフトが見直され、違反が是正された。

上記にもあるように、自動車運転者については、「改善基準告示」とよばれる特別に定められた基準があることに注意が必要です。改善基準告示では、労基法にはない「拘束時間」や「休息時間」といった概念があり、他の業種の労働時間規制が複雑になっています。

なお、「拘束時間」とは、始業時刻から終業時刻までの時間で、労働時間と休憩時間(仮眠時間を含む。)の合計時間をいい、「休息時間」とは、勤務と次の勤務の間の時間で、睡眠時間を含む労働者の生活時間として、労働者にとって全く自由な時間をいいます。

上の例では、基準告示により1か月の総拘束時間の上限(原則293時間。ただし、労使協定によって、1年の拘束時間が3,516時間を超えない範囲において、1年のうち6か月までは1か月の拘束時間を320時間まで延長できる)を超えていたことにより是正指導が行われています。

近年では、労働基準監督機関と地方運輸機関が、その臨検監督等の結果を相互に通報したり、労働基準監督機関が有する行政指導及び司法処分の権限並びに地方運輸機関が有する行政指導及び行政処分の権限を合同監督・監査を契機として行使するといった、省庁間の連携もとられるようになってきています。

本サイトでは、これまでも、全国単位のものから都道府県単位の労基署による監督指導結果について取り上げてきましたが、今後もこうした行政の動向についても紹介していきたいと思います。

 

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