• 今回は新たに新設された有給休暇の付与義務に関する省令事項について、労政審で提示された案を見ていく
  • 改正労基法39条7項では、使用者が与えなければならない有給休暇の日数が10日以上である労働者について、有給休暇の日数のうち5日については、継続勤務した期間を6箇月経過日から1年ごとに区分した各期間から一年以内の期間に、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならないと定められた
  • 省令事項となっているのは、年休の付与に関しては、入社日に関わらず付与日を全社で統一している場合の付与しなければならない期間の考え方

世界の労働基準監督署からVOL002:船橋労働基準監督署

前回は新しい三六協定(案)について述べましたが、今回は新たに新設された有給休暇の付与義務に関する省令事項について、労政審で提示された案を見ていくことにします。

初めに、改正労基法39条7項では、使用者が与えなければならない有給休暇の日数が10日以上である労働者について、有給休暇の日数のうち5日については、継続勤務した期間を六箇月経過日から一年ごとに区分した各期間(最後に1年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日(「基準日」)から一年以内の期間に、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならないと定められました。要するに、有給休暇の付与日数が10日以上付与する労働者は、5日は付与日から1年以内に会社が指定して取得させなければならないことになったのです。

ところで、年休の付与に関しては、入社日に関わらず付与日を全社で統一している場合があります。たとえば、毎年4月1日に一斉に付与するような場合です。この場合、労基法を下回るような付与の仕方はできませんので、法定の付与日よりも前倒しで付与することによって、年休の付与日を統一することができたのです。

そして、改正後の労基法39条7項但し書きでは、このような場合の取扱いを省令に委任するとしていました。すなわち、「有給休暇を当該有給休暇に係る基準日より前の日から与えることとしたときは、厚生労働省令で定めるところにより、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない」というわけです。

これについて、省令案では3つの条文が示されました。

第一に、法定の基準日より前に10労働日以上の年休を与える場合です。この場合には、その付与日から1年以内に5日の年休を取得させなければならないとされています。例えば、入社日である4月1日に10日の年休を与えることとした場合には、翌年の3月31日までに5日取得させることになるわけです。

条文案(第1項)は次のとおりです。

使用者は、法第三十九条第七項ただし書の規定により同条第一項から第三項までの規定による十労働日以上の有給休暇を与えることとしたときは、当該日数のうち五日については、基準日(法第三十九条第七項の基準日をいう。以下この条において同じ。)より前の日であって、当該日以降に十労働日以上の有給休暇を与えることとする日(以下この条において「第一基準日」という。)から一年以内の期間にその時季を定めることにより与えなければならない。

第2に、入社した年とその翌年とで年休の付与日が異なる等の理由から、5日の時季指定義務の履行期間に重複が生じる、いわゆる「ダブルトラック」が発生する場合です。この場合、年休の取得状況の管理が複雑になり得るため、「最初に10日の年休を与えた日から、1年以内に新たに10日の年休を与えた日から1年を経過するまでの期間」(=重複が生じている履行期間の第1の履行期間の始期から第2の履行期間の終期までの間)の長さに応じた日数を当該期間中に取得させることも認めるとされました。条文案(2項)は次の通りです。

前項の規定にかかわらず、使用者が法第三十九条第一項から第三項までの規定による十労働日以上の有給休暇を基準日又は第一基準日以降に与えることとし、かつ、当該日から一年以内の特定の日(以下この条において「第二基準日」という。)以降に新たに十労働日以上の有給休暇を与えることとしたときは、履行期間(基準日又は第一基準日を始期として、第二基準日から一年を経過する日を終期とする期間をいう。以下この条において同じ。)の月数を十二で除した数に五を乗じた日数について、当該履行期間中に、その時季を定めることにより与えることができる。

この規定は、文末が「できる」となっているように、第1項と選択することができる規定となっています。

第3に、これまで見てきた第1項・第2項による履行期間がそれぞれ経過した後は、第一基準日又は第二基準日から一年後の日が基準日とみなされ、法第39条第7項本文が適用されます。

第一項の期間又は第二項の履行期間が経過した場合においては、その経過した日から一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日を基準日とみなして法第三十九条第七項本文の規定を適用する。

付与日を統一している場合には、5日の年次有給休暇の付与義務は、このような考え方になりますので、注意するようにしてください。

参考リンク

第145回労働政策審議会労働条件分科会(厚生労働省HP)

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