image011厚生労働省の労働政策審議会に対して諮問したパートタイム労働法施行規則の改正案要綱及び「事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等に関する措置等についての指針」改正案要綱について、審議会から田村憲久厚生労働大臣に対して、「妥当」とする答申が行われました。

 厚生労働省は、この答申を踏まえ、速やかに省令等の制定を進めることとしています。

なお、省令案要綱及び告示案要綱のポイントは以下のとおりです。

1.省令案要綱

  • 短時間労働者に対して明示しなければならない労働条件に関する事項に「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口」を追加すること。
  • 通勤手当のうち「職務の内容に密接に関連して支払われるもの」については、均衡確保の努力義務の対象となる賃金に含まれるものとすること。

2.告示案要綱

  • 事業主は、短時間労働者が、待遇の決定に当たって考慮した事項の説明を求めたことを理由として不利益な取扱いをしてはならないこと。また、短時間労働者が、不利益な取扱いをおそれて、当該説明を求めることができないことがないようにすること。
  • 短時間労働者が、親族の葬儀等のために勤務しなかったことを理由として解雇等が行われることは適当でないものであること。

さて、これらのなかで、わかりづらいと思われるのが省令案要綱の2つめ、通勤手当に関する改正ですので、少し説明したいと思います。

現行のパートタイム労働法では、事業主に対して、「通常の労働者との均衡を考慮しつつ、その雇用する短時間労働者(通常の労働者と同視すべき短時間労働者を除く。・・・。)の職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験等を勘案し、その賃金(通勤手当、退職手当その他の厚生労働省令で定めるものを除く。・・・。)を決定する」ことが努力義務として課されています。

わかりやすさのために、「通常の労働者」を「正社員」、「短時間労働者」を「パート」とすると、この規定は、正社員との均衡を考慮して、職務の内容などを勘案してパートの賃金を決定するよう努力しなさいということになります。

ここで、元の条文の方で注目しなければならないのが「通勤手当」がこの努力義務の対象外とされていることです。通勤手当とは、本来職務の内容などとは関係のない賃金ですから、均衡確保の対象にもならないというのがその考え方です。

しかし、通勤手当という名目で支払われているものの、実際かかっている経費とは関係なく一律の額で払っているようなケースがあり、このような通勤手当は均衡確保の対象外とした趣旨と合わないということが問題となっていました。そこで、このような一律に支払われる通勤手当については、職務関連として整理をされるべきものではないかという意見があり、通勤手当のうち職務の内容に密接に関連して支払われるものについては、均衡確保の努力義務の対象となるよう省令を見直すという方向で整理されたというわけです。

したがって、通勤手当の支払基準が一律である場合には、(この規定は努力義務の規定ではありますが)本改正との関連で確認しておいた方がよいでしょう。

■関連リンク

「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律施行規則の一部を改正する省令案要綱」及び「事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等に関する措置等についての指針の一部改正案要綱」の諮問及び答申について

 

 

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