先日の記事でお知らせしたとおり、労働安全衛生法が改正されました。今回は、その中でも特に注目される「心理的な負担の程度を把握するための検査等(いわゆる「ストレスチェック制度)」について、行政通達を元に、詳しくみることにしましょう。

そこで、まず全体の流れを下図に示します(厚労省作成資料を抜粋)。

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改めて言いますが、今回の労働安全衛生法の改正により、事業者は、労働者に対し、医師等によるストレスチェックを行わなければならないものとされました。ストレスチェックを実施するのは、医師または保健師のほか、一定の研修を受けた看護師、精神保健福祉士も含まれる予定です。その内容については、改正に先立つ建議で「労働者のストレスの状況を把握するための検査の項目については、各事業場ですでに行われている取組も十分勘案しつつ、専門家の意見を聴き、中小規模事業場での実施可能性にも十分配慮した上で、国が標準的な項目を示すべき」とされており、現時点では

事業者は、この検査を受けた労働者に対し、当該検査を行った医師等から当該検査の結果が通知されるようにしなければなりません。ただし、事業主は労働者の同意を得ずに、医師等から検査結果の提供を受けることはできません。これは、プライバシーへの配慮と考えられます。

一方、検査結果の通知を受けた労働者であって、一定の要件(省令事項)に該当するものが医師による面接指導を受けることを希望する旨を申し出たときは、事業者は、申出をした労働者に対し、医師による面接指導を行わなければならないものとされました。同時に、労働者が面接指導を申出をしたことを理由とする不利益取扱いの禁止もあわせて定められています。

面接指導が行われた時は、事業者は、その結果を記録するとともに、面接指導の結果に基づき、労働者の健康を保持するために必要な措置について、医師の意見を聴かなければならないものとされています。そして、医師の意見を勘案し、その必要があると認めるときは、労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講ずるほか、医師の意見を安全衛生委員会等へ報告することその他の適切な措置を講じなければならないとされました。これらの詳細については、指針が作成されることになっています。

以上が、今回の改正内容の全体像となります。まずストレスチェックが行われ、その結果を知った労働者が申出をした場合は面接指導を行うという2段階があり、さらに面接指導の結果次第で必要な措置を講じるという流れになります。現時点では、実際に実施するためにはまだまだ不明な点も多く、それらについては省令、指針、行政通達を待って具体的な実施方法は検討する必要があるでしょう。

なお、50人未満の事業場については、当分の間、ストレスチェックの実施について「努力義務」とすることが定められています。

 

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