世界の労働基準監督署からVOL019:水戸労働基準監督署

今回は、改正改善基準告示のうち、トラック関係のものを見ていきましょう。

改善基準告示では、2日を平均した1日当たり(2日平均1日)の運転時間は、9時間以内とされています。これに関連するQ&Aに次のものがあります。

3-6(Q)2日平均の運転時間の起算点は、次のいずれから計算すればよいのでしょうか。
① 特定日の始業時刻の24 時間前から48 時間
② 特定日の前日の始業時刻から48 時間
(A)運転時間は、特定日を起算日として2日ごとに区切り、その2日間の平均とすることが望ましいですが、特定日の最大運転時間が改善基準告示に違反するか否かは、特定日(N 日)の運転時間と特定日の前日(N-1日)の運転時間との平均、特定日(N 日)の運転時間と特定日の翌日(N+1日)の運転時間との平均のいずれもが9時間を超えた場合、初めて違反と判断されます。
例えば、次の場合、設問の②のとおり、特定日の前日(N-1日)の始業時刻の10 時から起算して48 時間、特定日(N 日)の始業時刻の11 時から起算して48 時間で1日当たりの運転時間の平均を計算し、いずれもが9時間を超えた場合、初めて改善基準告示違反と判断されます。

以上のように、2日平均運転時間の規制は、判定の仕組みが少し複雑ですので、注意が必要です。また、改正改善基準によれば、運転時間については、連続運転時間は4時間以内とし、運転開始後4時間以内または4時間経過直後に、30分以上の運転の中断が必要とされています。運転の中断は、1回がおおむね連続10分以上とした上で分割することもできますが、1回が10分未満の運転の中断は、3回以上連続してはならないとされています。これに関連するQ&Aを見てみましょう。

3-8 (Q)連続運転時間には、次の場合も、カウントするのでしょうか。
① 渋滞中にアイドリングストップでエンジンが停止した場合
② サービスエリアなどの駐車の順番待ちのため、走行、停車を繰り返し、少しずつ前に進む場合
(A)連続運転時間とは、トラック運転者が連続して運転している時間であり、「運転の中断」に該当しない一時的な停車時間は連続運転時間となります。したがって、例えば、設問の①②の場合における停車時間は、あくまで走行中に一時的に停車している状態に過ぎず、すぐに車両を動かさなければならない状態のため、連続運転時間となります。

「すぐに車両を動かさなければならない状態」は「運転の中断」とは認められないことを、具体例を示してわかりやすく説明した設問です。

3-10 (Q)「運転の中断」は、「1回おおむね連続10分以上、合計30分以上」とし、「10分未満の中断は3回以上連続しない」とありますが、
① 例えば、「運転の中断」が、9分、9分、12分で合計30分といった中断も認められるのでしょうか。
② 例えば、5分は「おおむね連続10分以上」となるのでしょうか。
③ (省略)
(A)・・・「おおむね連続10分以上」とは、「運転の中断」は原則30分以上とする趣旨であり、例えば10分未満の「運転の中断」が3回以上連続する等の場合は、「おおむね連続10分以上」に該当しません。その上で、①10分に満たない「運転の中断」があることをもって直ちに改善基準告示違反となるものではありません。②5分は「おおむね連続10分以上」と乖離しているため、認められません。(以下省略)

今回の改正改善基準告示では、「運転の中断」について「おおむね」というややあいまいな表現が加わりました。これにより、10分に満たない「運転の中断」をもって、ただちに告示違反とはみなされないことが示されましたが、さすがに5分では「運転の中断」とは認められません。

3-11 (Q)連続運転時間について、「サービスエリア等に駐停車できないことにより、やむを得ず4時間を超える場合、4時間30分まで延長可」とありますが、
① 30分延長をする場合の記録の方法について教えてください。
② 「やむを得ず」とは何を指すのでしょうか。年末年始などの特定の時期や、大雨等の特定の事象にかかわらず、サービスエリア等に駐停車できない場合には30分延長できるということでしょうか。
③ 1日何回まで延長できるでしょうか。
④ サービスエリア、パーキングエリア等は、高速道路にあるものに限られますか。
(A)① デジタル式運行記録計の記録のほか、運転日報等における記録によります。
② 新告示第4条第1項第7号ただし書は、サービスエリア等で運転を中断しようとしたものの、当該サービスエリア等が満車である等により駐停車できない場合の取扱いを定めたものであり、駐停車できない理由としては、サービスエリア等が満車である場合のほか、満車ではないものの車種に応じた駐車スペースが満車である場合が考えられます。
③ 延長できるのは、一の連続運転時間につき1回限りです。なお、当該サービスエリアが常態的に混雑していることを知りながら、連続運転時間が4時間となるような運行計画をあらかじめ作成することは、当然に認められません。 ④ サービスエリア、パーキングエリア等には、コンビニエンスストア、ガスステーション及び道の駅も含まれますが、これらの施設は高速道路に限らず、一般国道などに併設されているものも対象となります。

改正改善告示では、実態に配慮した規制も設けられています。特に大型のトラックでは駐車スペースがない場合もあるため、あらかじめ駐車スペースのある場所を社内で共有しておくことも大切です。

このように、今回のQ&Aは具体的な内容のものも多く、実務上も参考になります。

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参考リンク

自動車運転者の労働時間等の改善のための基準の一部改正による改正後の解釈等について(令和5年3月31日基発0331第49号)(厚生労働省HP、PDF)