今回の記事、ざっくり言うと・・・

  • 改正労働者派遣法による労働契約申込みみなし制度が平成27年10月1日から施行される
  • 労働契約申込みみなし制度は、①禁止業務に従事させた場合、②無許可事業主等から派遣労働者を受け入れた場合、③派遣可能期間の制限に違反した場合、④いわゆる偽装請負等の場合、のいずれかに該当する場合に、善意無過失の場合を除き、労働者派遣の役務の提供を受ける者が派遣労働者に対して、労働契約の申込みをしたも のとみなす制度
  • このたび、この労働契約申込みみなし制度に関する施行通達が公開された

image071厚生労働省HPに、改正労働者派遣法による労働契約申込みみなし制度が平成27年10月1日から施行されることにあわせて、施行通達が掲載されました。

労働契約申込みみなし制度は、次の行為を行った時点において、善意無過失の場合を除き、労働者派遣の役務の提供を受ける者が派遣労働者に対して、労働契約の申込みをしたも のとみなす制度です。

  • 禁止業務に従事させた場合
  • 無許可事業主等から派遣労働者を受け入れた場合
  • 派遣可能期間の制限に違反した場合
  • いわゆる偽装請負等の場合

そこで、今回は、この通達の内容をふまえて、労働契約申込みみなし制度についてみてみましょう。

まず、改正労働者派遣法では、派遣先等が、上記の違法行為を行った時点において、派遣先が労働契約の申込みをしたとみなされることになります。

この場合、2暦日にわたって継続就業するような日単位の役務提供とならない場合を 除き、「違法行為が行われた日ごとに労働契約の申込みをしたとみなされる」とされています。

ところで、違反行為のうち、「いわゆる偽装請負等」については、他の3つの類型と異なり、労働者派遣法等の規定の適用を免れる目的で、請負契約等を締結し、当該請負事業主が雇用する労働者に労働者派遣と同様に指揮命令を行うこと等によって、偽装請負等の状態となった時点で労働契約の申し込みをしたものとみなされるものであるとされています。

ポイントは、「労働者派遣法等の規定の適用を免れる目的で」というところです。つまり、「いわゆる偽装請負等」に該当するという場合には、派遣先等の「主体的な意思」が必要となるわけです。したがって、「指揮命令等を行 い偽装請負等の状態となったことのみをもって『偽装請負等の目的』を推定するものではないこと」とされています。

 

さて、上記の違法行為を行った時点では、「労働契約の申込み」をした状態ですので、これだけでは労働契約は有効とはなりません。これに対応する派遣労働者の「承諾」があって、初めて派遣先等との労働契約が成立することになります。

そして、その時期は、派遣労働者が承諾の意思表示をした時点となります。したがって、派遣労働者が承諾の意思表示をしなければ、派遣先等との労働契約も成立しないことになるわけです。つまり、違反行為があったら自動的に効果が発生するとういわけではありません。

なお、違法行為の前にあらか じめ派遣労働者が「承諾をしない」ことを意思表示した場合であっても、当該意思表示に係る合意については公序良俗に反し、無効と解されるとされており、事前の承諾放棄をさせることは原則としてできません。

最後に、このようにして成立した労働契約の労働条件の内容はどのようなものとなるのについてみてみましょう。

この点について、施行通達では、違法行為の時点における派遣元事業主等と当該派遣元事業主等に雇用される派遣労働者との間の労働契約上の労働条件と同一の労働条件とされています。要するに、派遣元と派遣労働者との契約内容を、派遣先が引き継ぐことになります。

このように見てみると、使用者は派遣先へ移動するものの、実体としては、業務を行う場所も、その内容も変わらないことになります。

さて、派遣元との労働契約が派遣先へ引き継がれるということなのですが、これは、いろいろとややこしいことが出てくるような部分です。

ここからは、試験ですが、たとえば、引き継がれた労働条件と派遣先の就業規則との関係です。適用される就業規則はどれになるのか、当然派遣元では、派遣先の就業規則の内容と異なる労働条件だったわけですが、それとの関係は、などの問題が生じることが考えられます。

これらについて、今回の施行通達では詳しい記述はありませんが、就業規則は適用を受ける労働者の労働条件の最低基準を定めたものですので、就業規則により上書きされる部分というのも生じてくるのではないかと思います。

なお、労働者派遣法40条の6第4項では、「申し込まれたものとみなされた労働契約に係る派遣労働者に係る労働者派遣をする事業主は、当該労働者派遣の役務の提供を受ける者から求めがあつた場合においては、当該労働者派遣の役務の提供を受ける者に対し、速やかに、同項の規定により労働契約の申込みをしたものとみなされた時点における当該派遣労働者に係る労働条件の内容を通知しなければならない」とされています。

■関連リンク

労働契約申込みみなし制度について(平成27年7月10日付け解釈通達・厚生労働省HP)