【8月3日一部修正】

写真は記事の内容と関係ありません。

改正育児介護休業法の第2段の施行となる10月1日を前に、厚生労働省が、改正育児介護休業法Q&Aを更新しました。以下では、新たに追加された設問のうち、注目のものをみていくことにしましょう。

Q2-12:個別の周知・意向確認の措置について、印刷可能な書面データをイントラネット環境に保管しておき、妊娠・出産等をした者はそれを確認するようにあらかじめ通達等で社内周知しておく、という方法でも書面による措置として認められるのでしょうか。
A2-12:法第 21 条第1項では、妊娠・出産等の事実を申し出た労働者に対して、事業主が、個別に、育児休業等に関する制度の周知を行い、また、その申出に係る意向確認を行うことが義務付けられておりますので、お尋ねのように、あらかじめ広く社内周知を行い、妊娠等の申出をした労働者が自らその書面等を確認するといった方法では、法第21条第1項の事業主の義務を履行したことにはなりません。

法令では意向確認を行うことが求められているため、本質問のように資料の周知で済ませることはできません。

Q3-6:同じく「育児休業に関する相談体制の整備」について、相談を受け付けるためのメールアドレスや URL を定めて労働者に周知を行っている場合は、相談体制の整備を行っているものとして認められますか。
A3-6:A3-5 のとおり、実質的な対応が可能な窓口が設けられていれば、その存在をメールアドレス等の方法で労働者に周知を行うことは差し支えありません。

なお、A3-5では、相談体制の整備を果たしたというためには、①相談体制の窓口の設置や相談対応者を置き、これを周知すること、②窓口を形式的に設けるだけでは足らず、実質的な対応が可能な窓口が設けられていることをいうものとされています。

Q5-13:出生時育児休業申出期限の短縮に関する雇用環境の整備等の措置のうち、「育児休業申出に係る当該労働者の意向を確認するための措置を講じた上で、その意向を把握するための取組を行うこと」…について、事業主が育児休業申出の意向を確認したものの、回答がない労働者がいる場合は、この要件を満たすためには、どのような取組を行えばよいのでしょうか。
A5-13:最初の意向確認のための措置の後に、回答がないような場合は、回答のリマインドを少なくとも1回は行うことが必要です(そこで、労働者から「まだ決められない」などの回答があった場合は、「未定」という形で把握することとなります。)

出生時育児休業の申出期限の短縮については、対応が分かれていると思われますが、少なくとも回答のリマインドに関しては、少なくとも1回行えばよいとされたので、ハードルはそこまで高くないといってよいでしょう。

Q6-3:出生時育児休業は、年次有給休暇の付与に係る出勤率算定に当たって、出勤したものとみなされますか。また、出生時育児休業中に部分就業を行う予定であった日について、欠勤した場合や子の看護休暇等の年休の出勤率算定に含まれない休暇を取得した場合についてはどのようにみなされますか。
A6-3:出生時育児休業は法第2条第1号に規定する育児休業に含まれるため、出生時育児休業をした期間についても、育児休業をした期間と同様に出勤率の算定に当たり出勤したものとみなされます。 また、出生時育児休業中に部分就業を行う予定であった日について、欠勤した場合や子の看護休暇等の年次有給休暇の付与に係る出勤率算定に当たり出勤したものとみなされない休暇を取得した場合であっても、その日については出生時育児休業期間中であることから、出勤したものとみなされます。

本設問は、出生時育児休業中の就労を厚労省はどう考えているのかの一端がわかる意味で、興味深い設問です。この回答は、出生時育児休業中に部分就業を行う予定であった日は、労働義務のある労働日ではないことを示していえそうです。就業することについて労働者の同意を要することを条件にしていることも、それを示唆していると考えられます。

しかし、この後のA6-8では「出生時育児休業期間中の就業日は労働日である」ことが明示されています(そのため、A6-17では、「出生時育休中の部分就業であっても、就業日について使用者の責めに帰すべき事由による休業となった場合は、休業手当の支払いが必要となります」と回答されています。)。

この2つをどのように統一的に理解すればいいのかという問題は筆者の手に余る問題ですが、たとえば、部分就業をしたとしてもそこで出生時育休が終了したり分断されるわけではなく、就業の有無にかかわらず出生時育休期間ではあるので、年休の出勤率の計算上は出生時育休期間中と取り扱うが、要件を満たした場合は就労義務が発生する労働日となっているので、年休の取得も可能ですし、会社都合の休業の場合には休業手当の支払いを免れることはできない、という考え方はできるのではないでしょうか。

Q6-9:出生時育児休業中に就業させることができる者について労使協定で定める際、
・「休業開始日の○週間前までに就業可能日を申し出た労働者に限る」といった形で対象労働者の範囲を規定することや、
・1日勤務できる者(所定労働時間より短い勤務は認めないなど)、特定の職種や業務(営業職は可だが事務職は不可、会議出席の場合のみ可など)、特定の場所(A 店は可だが B 店は不可、テレワークは不可など)で勤務できる者、繁忙期等の時期に取得する者等に限定すること
は可能ですか。
A6-9:ご指摘のような形で対象労働者の範囲を定めることは可能です。

このQ&Aは育休中の就労について、労使協定で対象者を制限することが可能であることを示しています。

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参考リンク

令和3年改正育児・介護休業法に関するQ&A(令和年4年7月25日更新)(厚生労働省HP,PDF)