新型コロナウイルス感染症に係る傷病手当金の支給については、過去にも厚生労働省がQ&Aを公開していますが、今回新たなQ&Aを追加した改訂版が公表されました。そこで、今回は追加された設問のうち、注目の内容をみていくことにしましょう。

Q11 新型コロナウイルス感染症にかかる傷病手当金の支給申請に当たり、保健所等が発行する「宿泊・自宅療養証明書」の添付は必要か。
A 健康保険法施行規則…第84条第2項では、傷病手当金の支給申請書には医師等の意見書及び事業主の証明書を添付しなければならないこととされているが、「宿泊・自宅療養証明書」については添付を求められていない。 また、「宿泊・自宅療養証明書」については、医療従事者や保健所等の方々の事務負担を考慮して内容を簡素化する等の対応を行っている中で、保険者において一律に当該証明書を求めることは適切ではない。 なお、保険者の判断により、何らかの証明書を求める場合には、例えば、My HERSYS(※1)により電磁的に発行された証明書の活用を認める等の対応が考えられる(※2)。
(※1) 厚生労働省が運用している「新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム」。陽性者等がスマートフォンやパソコン等で自身や家族の健康状態を入力できる。
(※2) 生命保険協会及び日本損害保険協会では、医療従事者や保健所等の方々の事務負担を考慮し、宿泊療養又は自宅療養の期間が、厚生労働省の療養解除基準に準じた期間(例:無症状であれば7日間、有症状であれば10日間)の範囲内であれば、宿泊療養又は自宅療養の開始日の証明に基づき支払いを行い、宿泊療養又は自宅療養の終了日の証明は求めないような取扱いを行っている。

なお、やむを得ない理由により医療機関への受診を行わず、医師の意見書を添付できない場合には、支給申請書にその旨を記載するとともに、事業主からの当該期間、被保険者が療養のため労務に服さなかった旨を証明する書類を添付すること等により、保険者において労務不能と認められる場合、傷病手当金を支給する扱いとする。

今回の通知で、「My HERSYSにより電磁的に発行された証明書」を今後活用していくことが示されました。

次に海外で新型コロナに感染した場合の取り扱いについてみてみましょう。

Q13 海外で新型コロナウイルス感染症に感染し、医師の意見書をは、何をもって労務不能な期間を判断すればよいか。添付できない場合
A やむを得ない理由により医療機関への受診を行わず、医師の意見書を添付できない場合には、支給申請書にその旨を記載するとともに、事業主からの当該期間、被保険者が療養のため労務に服さなかった旨を証明する書類を添付すること等により、保険者において労務不能と認められる場合、傷病手当金を支給する扱いとする。

海外で罹患するケースは、これまではほとんどまれでしたが、今後はそういった機会も増加することが予想されます。渡航先で罹患した場合、多額の費用が掛かる可能性もあります。

なお、健康保険制度においても海外療養費という給付はありますが、その支給対象となるのは、日本国内で保険診療として認められている医療行為に限られます。また、支給額も日本国内の医療機関等で同じ傷病を治療した場合にかかる治療費を基準に計算した額(実際に海外で支払った額の方が低いときはその額)から、自己負担相当額(患者負担分)を差し引いた額となります。日本と海外での医療体制や治療方法等が異なるため、海外で支払った総額から自己負担相当額を差し引いた額よりも、支給金額が大幅に少なくなることがあります。したがって、夏休みなどを利用して海外旅行に行く従業員がいる場合には、会社としても民間の傷害保険に加入する等の注意喚起をしておいた方がよいかもしれません。

お問い合わせはお気軽に。043-245-2288

参考リンク

「新型コロナウイルス感染症に係る傷病手当金の支給に関するQ&A」の改訂について(令和4年6月24日事務連絡)