世界の労働基準監督署からVOL009:高崎労働基準監督署

育児や介護を⾏う労働者が⼦の看護休暇や介護休暇を柔軟に取得することができるよう、令和3年1月1日から時間単位で取得できるようになります。ところで、子の看護休暇等の時間単位取得と類似する制度に労基法の時間単位年休がありますが、中身は異なりますので注意が必要です。今回はその主な相違点をみていくことにしましょう。

①労使協定の位置づけ
時間単位年休では労使協定を締結しなければ認められないのに対して、子の看護休暇等では、逆に⼦の看護休暇等を時間単位で取得することが困難な業務を、労使協定を締結することにより、時間単位の休暇制度の対象からその業務に従事する労働者を除外することができます。つまり、時間単位年休と子の看護休暇等では、労使協定の機能が逆ということになります。この違いが、以下の内容にも関連していることに留意して読んでください。

②時間未満の時間数の可否
時間単位年休における取得の単位である時間とは、整数の時間数を指し、1時間に満たないものは含まれません。一方、子の看護休暇等の場合は、分単位で取得させることも許容されます。

③取得単位の制限
時間単位年休では、2時間や3時間といったように、1時間以外の時間を単位として時間単位年休を与えることとする場合には、労使協定で、その時間数を定めることとされています。一方、子の看護休暇等では、このような取り扱いは認められません(1時間単位での取得は認めないとすることはできない。)。

④中抜け取得の可否
「中抜け」とは就業時間の途中から時間単位の休暇を取得し、就業時間中に再び戻ることをいいます。時間単位の年休については、これを制限することはできません。一方、子の看護休暇等では、原則として「中抜け」はできません(中抜けを認めることもできます。)。

⑤賃金の支払
時間単位の年休については、①平均賃金もしくは②所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金の額をその日の所定労働時間数で除して得た額の賃金、または③標準報酬日額をその日の所定労働時間数で除して得た金額を、当該時間に応じ支払わなければなりません。一方、子の看護休暇等は無給で差し支えありません。

一方、時間単位の年休も子の看護休暇等も、1日分の年次有給休暇が何時間分の時間単位年休に相当するかについては、1日の所定労働時間数を下回らないものとされていることから、1時間に満たない時間数については1時間に切り上げる必要があるなど共通する部分もあります。

このように、両者は同じような制度のようにも思われますが、異なる点も多いことに留意して下さい。

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参考リンク

子の看護休暇・介護休暇の時間単位での取得に関するQ&A(厚生労働省HP,PDF)

改正労働基準法に係る質疑応答(厚生労働省HP,PDF)