今日の記事、ざっくり言うと・・・

  • 奈良労働局が奈良局版の有期特措法のリーフレットを公開
  • 有期特措法は、①⾼度な専⾨的知識などを持つ有期雇⽤労働者、②定年後引き続き雇⽤される有期雇⽤労働者が、その能⼒を有効に発揮できるよう、事業主が雇⽤管理に関する特別の措置を⾏う場合に、労働契約法第18条の「無期転換ルール」に特例を設けるもの

世界の労働基準監督署からVOL017:三田労働基準監督署

奈良労働局が奈良局版の有期特措法のリーフレットを公開しました。

実は筆者も来月「無期転換ルール」について研修講師を務める予定となっており、現在復習中だったという都合もありましたので、今回はこのリーフレットを元に、有期特措法について解説していくことにしましょう。

有期特措法は、①⾼度な専⾨的知識などを持つ有期雇⽤労働者、②定年後引き続き雇⽤される有期雇⽤労働者が、その能⼒を有効に発揮できるよう、事業主が雇⽤管理に関する特別の措置を⾏う場合に、労働契約法第18条の「無期転換ルール」に特例を設けるものです。

なお、通算契約期間の算定は、改正労働契約法の施⾏⽇である平成25年4⽉1日以後に開始する有期労働契約が対象ですので、特例の適用対象も、それ以後に開始する有期労働契約に限られます。

まず、特例の対象となる労働者は、次の2つです。

  1. 5年を超える⼀定の期間内に完了することが予定されている業務に従事する、⾼収⼊、かつ⾼度な専⾨的知識・技術・経験を持つ有期雇⽤労働者。(⾼度専⾨職)
  2. 定年後に、同⼀の事業主または「⾼年齢者等の雇⽤の安定等に関する法律」における「特殊関係事業主」に引き続き雇用される有期雇用労働者。(継続雇用の高齢者)

有期特措法による無期転換ルールの特例の適⽤を受けるためには、事業主が、雇用管理措置の計画を作成した上で、都道府県労働局⻑の認定を受けることが必要です。その結果、次の通り、無期転換申込権が発生しないことになります。

  1. ⾼度専⾨職:⼀定の期間内に完了することが予定されている業務に就く期間(上限10年)
  2. 継続雇⽤の⾼齢者:定年後に引き続き雇用されている期間

1.⾼度専⾨職の年収要件と範囲

有期雇用労働者が①適切な雇⽤管理に関する計画を作成し、都道府県労働局⻑の認定を受けた事業主に雇用され、②⾼収⼊で、かつ⾼度の専⾨的知識等を有し、③その⾼度の専⾨的知識等を必要とし、5年を超える⼀定の期間内に完了する業務(特定有期業務。以下「プロジェクト」といいます。)に従事する場合には、そのプロジェクトに従事している期間は、無期転換申込権が発生しません。

ただし、無期転換申込権が発生しない期間の上限は、10年です。例えば、7年のプロジェクトの開始当初から完了まで従事する⾼度専⾨職については、その7年間は無期転換権は発生しません。

⾼度専⾨職の年収要件と範囲については、次のとおりです。

まず、年収要件は、事業主との間で締結された有期労働契約の契約期間に、その事業主から支払われると⾒込まれる賃⾦の額を、1年間当たりの賃⾦の額に換算した額が、1,075万円以上であることが必要です。

ここで、「⽀払われると⾒込まれる賃⾦の額」とは、契約期間中に⽀払われることが確実に⾒込まれる賃⾦の額をいいます。具体的には、個別の労働契約または就業規則等において、名称の如何にかかわらず、あらかじめ具体的な額をもって⽀払われることが約束され、⽀払われることが確実に⾒込まれる賃⾦は全て含まれます。

その⼀⽅で、所定外労働に対する⼿当や労働者の勤務成績等に応じて支払われる賞与、業務給等その支給額があらかじめ確定されていないものは含まれないものと解されます。ただし、賞与や業績給でもいわゆる最低保障額が定められ、その最低保障額については⽀払われることが確実に⾒込まれる場合に、その最低保障額は含まれるものと解されます。

⾼度専⾨職の範囲は、次のいずれかにあてはまる方が該当します。

  1. 博士の学位を有する者
  2. 公認会計⼠、医師、⻭科医師、獣医師、弁護⼠、⼀級建築⼠、税理⼠、薬剤師、社会保険労務⼠、不動産鑑定⼠、技術⼠または弁理⼠
  3. ITストラテジスト、システムアナリスト、アクチュアリーの資格試験に合格している者
  4. 特許発明の発明者、登録意匠の創作者、登録品種の育成者
  5. 大学卒で5年、短⼤・⾼専卒で6年、⾼卒で7年以上の実務経験を有する農林⽔産業・鉱工業・機械・電気・建築・土木の技術者、システムエンジニアまたはデザイナー
  6. システムエンジニアとしての実務経験5年以上を有するシステムコンサルタント
  7. 国等によって知識等が優れたものであると認定され、上記①から⑥までに掲げる者に準ずるものとして厚⽣労働省労働基準局⻑が認める者

2.継続雇⽤の⾼齢者の特例(第二種特定有期雇用労働者)

有期契約労働者が①適切な雇⽤管理に関する計画を作成し、都道府県労働局⻑の認定を受けた事業主の下で、②定年に達した後、引き続いて雇用される有期雇用労働者(継続雇用の高齢者)については、その事業主に定年後引き続いて雇用される期間は、無期転換申込権が発生しません。

定年を既に迎えている⽅を雇⽤する事業主が認定を受けた場合、そうした⽅も特例の対象となります。ただし、労働者が既に無期転換申込権を⾏使している場合を除きます。

また、定年後に同一の事業主に継続雇用され、その後引き続いて特殊関係事業主に雇用される場合は、特例の対象となります。(通算契約期間のカウントについては、同一の使用者ごとになされるため、その特殊関係事業主に雇⽤された時点から新たに⾏われます。)

特別措置法の特例適⽤の⼿続きは、次の通りです。

  1. 無期転換ルールの特例の適⽤を希望する事業主は、特例の対象労働者に関して、能⼒が有効に発揮されるような雇用管理に関する措置についての計画を作成します。
  2. 事業主は、作成した計画を、本社・本店を管轄する都道府県労働局に提出します。
  3. 都道府県労働局は、事業主から申請された計画が適切であれば、認定を⾏います。
  4. 認定を受けた事業主に雇⽤される特例の対象労働者(⾼度専門職と継続雇用の高齢者)について、無期転換ルールに関する特例が適⽤されます。

なお、無期転換ルールに関する特例が適⽤されていることは、有期労働契約の締結・更新の際に、対象労働者に明⽰する必要があります。

特例は、認定された計画に関係する事業主及び労働者について適用されますので、認定が取り消されれば、特例は適⽤されなくなります。この場合、通常の無期転換ルールが適用され、当初の労働契約から
の通算契約期間が5年を超えていれば、それまで特例の対象となっていた労働者であっても原則どおり、無期転換申込権が発生することになります。

参考リンク

平成30年4月から本格化!「無期転換ルール」とその特例について(奈良労働局)