新型コロナウイルスの影響によりテレワークが急速に拡大するなか、派遣労働者のテレワークを認めないことが問題となっているところ、厚生労働省が「派遣労働者等に係るテレワークに関するQ&A」の令和3年2月4日更新版を公開しました。

本Q&Aには、派遣労働者がテレワークを行う場合にあたっての派遣契約書の記載方法など、実務上重要な内容もふくまれています。そこで、今回は最新版で追加された設問を中心に見ていくことにしましょう。

問1-5 派遣労働者がテレワークにより就業を行う場合、就業条件等の明示(労働者派遣法第 34 条)は、どのように行えばよいか。(令和3年2月4日追加)

答 就業条件等の明示は、労働者派遣法第 34 条に基づき、派遣先の事業所だけでなく、具体的な派遣就業の場所を就業条件明示書に記載するとともに、所属する組織単位及び指揮命令者についても明確に記載することが必要となる。…なお、個人情報保護の観点から、派遣労働者の自宅の住所まで記載する必要はないこと
に留意すること

派遣労働者についてテレワークを実施する場合には、就業条件通知書にそのことがわかるように記載する必要があります。たとえば、派遣先の事業所に出社する就業を基本とし、必要に応じてテレワークにより就業する場合には、「就業場所」の欄に「○○株式会社○○営業所○○課○○係(〒・・・-・・・・○○県○○市○○○Tel)ただし、必要に応じて派遣労働者の自宅」といった記載になります(労働者派遣契約にも同様の記載が必要となります。)。

問4-2 テレワークを実施する派遣労働者に対して、派遣元事業主として、職務能力等の評価をどのように実施していく必要があるか。(令和3年2月4日追加)

答 具体的な評価方法については、基本的に派遣元事業主において決定すべきものであるが、出社する場合と同様に、派遣先から派遣労働者の業務の遂行の状況等の情報の提供を受けるなど、公正に評価することが望ましいものである。ただし、派遣元事業主が労使協定方式を選択する場合には、労働者派遣法第 30 条の4第1
項第3号(※)の対象になることに留意すること。
また、派遣先においては、労働者派遣法第 40 条第5項の規定により、派遣元事業主の求めに応じ、派遣労働者の業務の遂行の状況等の情報を派遣元事業主に提供する等必要な協力をするように配慮しなければならないことに留意すること。
※ 派遣労働者の職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験等を公正に評価して賃金を決定すること。

元々派遣元は直接労働者を指揮命令する立場にないので、テレワークの有無にかかわらず発生する問題です。しかし、協定対象派遣労働者の賃金については、職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験その他の就業の実態に関する事項を公正に評価し、協定対象派遣労働者の賃金を決定することが求められますので、留意してください。

問5-4 労働者派遣法第 40 条第4項に、派遣先は、その指揮命令の下に労働させる派遣労働者について、「適切な就業環境の維持」等必要な措置を講ずるように配慮しなければならないとされている。派遣先が、派遣労働者のテレワークについて協力しない場合、労働者派遣法上問題があるか。(令和3年2月4日追加)

答 例えば、派遣先に雇用される通常の労働者に対してテレワークを実施する環境が整っている中で、派遣元事業主から派遣労働者のテレワークの実施に係る希望があったにもかかわらず、派遣労働者であることのみを理由として、一切措置を講じない場合等は、配慮義務を尽くしたとはいえないと考えられる。

直接雇用の労働者にはテレワークを認めているにもかかわらず、派遣労働者については認めないことについては、合理的な理由がなければ、配慮義務違反の可能性があることに留意して下さい。

問5-5 労使協定方式を選択しているが、労使協定に派遣労働者のテレワークに関する記載をすることを検討している。具体的に、どのような記載が考えられるか。(令和3年2月4日追加)

答 派遣労働者のテレワークは、派遣労働者の「待遇」に該当するものと考えられ、労使協定方式の場合は、法第 30 条の4第1項第4号の対象になるものである。
テレワークについては、派遣先の就業環境等も踏まえ検討が必要なものであり、派遣先との交渉が必要なものであることから、労使協定において、テレワークに関する内容を明示的に定めることが望ましく、例えば、以下のような記載内容が考えられること。
(例)
(賃金以外の待遇)
第○条 教育訓練、福利厚生その他の賃金以外の待遇については、正社員に適用される○○就業規則第○条から第○条までの規定と不合理な待遇差が生じることとならないものとして、○○就業規則第○条から第○条までの規定を適用する。
2 甲(※派遣元事業主)は、対象従業員(※派遣労働者)を対象とするテレワークについて、前項の規定を遵守できるよう、派遣先と誠実に交渉するなど適切な対応をとるものとする

テレワークは就業場所の問題であり、それを「待遇」と解することには疑問がありますが、厚生労働省は「待遇」と解釈している点には留意するべきです。

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参考リンク

派遣労働者等に係るテレワークに関するQ&A(令和2年8月 26 日公表(令和3年2月4日更新))(厚生労働省HP,PDF)