世界の労働基準監督署からVOL008:さいたま労働基準監督署

厚生労働省内に設置された「多様化する労働契約のルールに関する検討会」が報告書を公開しました。本報告書は、今後の労働基準法、労働契約法等の改正動向を伺う重要なものです。

報告書では、現時点で無期転換ルールに関する問題点をふまえたうえで、次の6つの各論について検討されました。以下では、重要となりそうな点について紹介したいと思います。

  1. 無期転換を希望する労働者の転換申込機会の確保
  2. 無期転換前の雇止め等
  3. 通算契約期間及びクーリング期間
  4. 無期転換後の労働条件
  5. 専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法の活用状況
  6. 労使コミュニケーション

1については、個々の労働者が自社の無期転換制度を理解した上で無期転換申込権を行使するか否かを主体的に判断しやすくするとともに、紛争の未然防止を図るため、使用者が要件を満たす個々の労働者に対して、労働契約法18条に基づく無期転換申込みの機会の通知を行うよう義務づけることが適当とされました。

具体的には、労働基準法15条に基づく労働条件明示の明示事項とすることとされ、そのタイミングとしては、無期転換申込権が発生する契約更新ごとのタイミングが適当とされました。

通知に際しては、無期転換後の労働条件も併せて通知することとされ、その具体的な内容は、労働基準法施行規則5条の1項各号全て(無期労働契約になることに伴い不要となる事項を除く。)の事項とすることが適当とされました。また、無期転換申込権発生前に、無期転換後の労働条件に関して「別段の定め」を設けた場合、または既存の「別段の定め」を変更した場合、通知する無期転換後の労働条件は、その「別段の定め」の内容を反映した労働条件とすることが適当とされています。

他方、無期転換申込権発生時点で「別段の定め」がない場合は、契約期間以外の労働条件について現に締結している有期労働契約の労働条件と同一となる旨を通知することが適当とされました。

また、通知以外の方法についても無期転換申込権の行使の意向確認を使用者の義務とすることなどが検討されましたが、これには慎重論があり、望ましい対応として周知される見込みです。

次に2については、無期転換ルール導入時には雇止めの誘発への懸念も指摘されていたが、更新上限がある事業所の割合は微増にとどまったこともふまえ、個別労働紛争解決制度の助言・指導においても活用していくことが適当とされました。

また、紛争の未然防止や解決促進のため、労働基準法施行規則5条1項1号の2の「更新する場合の基準」の中に更新上限の有無・内容が含まれることの明確化、最初の契約締結より後に更新上限を新たに設ける場合には、労働者からの求めに応じて、上限を設定する理由の説明の義務づけを措置することが適当とされました。

検討会では、無期転換申込みを行ったこと等に対する報復的な不利益取扱いや無期転換申込みを妨害する不利益取扱いが行われていることもヒアリングで報告されており、議論されましたが、今回は、その内容に応じて労働契約法や民法の一般条項、判例法理等による司法的救済の対象となるものであり、違法とされる行為に関して考え方の周知の徹底を図っていくことが適当とされました。

お問い合わせはお気軽に。043-245-2288

参考リンク

「多様化する労働契約のルールに関する検討会」の報告書を公表します(厚生労働省HP)