世界の労働基準監督署からVOL009:高崎労働基準監督署

前回に引き続き、「多様化する労働契約のルールに関する検討会」のなかの無期転換ルールの改正動向についてみていきましょう。

報告書では、「通算契約期間及びクーリング期間」に対する言及もあります。現行の労働契約法18条が、無期転換申込権の発生に必要な通算契約期間について、5年を超える場合としたのは、①有期労働契約の反復更新による濫用的利用を防止する必要がある一方で、②有期労働契約が雇用機会の確保や、需給変動への対応に一定の役割を果たしていることとのバランスを慎重に考慮したものとされています。

これについては、特に変えるべき強い事情がないと考えられることから、制度の安定性も勘案すれば、通算契約期間及びクーリング期間について、現時点で制度枠組みを見直す必要が生じているとは言えないと考えられるとされました。したがって、ここについては、制度の見直しは行われないものとみられます。

次に「無期転換後の労働条件」については、無期転換に際し、労働条件の見直しが無制限に認められるわけではないこと、特に労働条件を引き下げる場合にはその効力が司法において慎重に判断される可能性が高いことが明確になるよう施行通達の記載を修正するとともに、こうした内容について個別労働紛争解決制度の助言・指導においても活用していくことを検討することが適当とされました。

また、無期転換後の労働条件の見直しについては、無期転換ルールの活用が進み、無期転換者が増えていくことを見据えて、企業が自社の人事制度全体を踏まえて、正社員登用をはじめとする多様なキャリアコースの検討等をすることができるよう、無期転換者を活用していくに当たって参考となる情報提供を行い、労使自治を促進することが適当とされました。

無期転換者と他の無期契約労働者との待遇の均衡についても、前回の記事で提案された無期転換申込権が生じた有期契約労働者に無期転換後の労働条件について通知するタイミングを活用して、無期転換後の労働条件に関する決定をするにあたって労働契約法3条2項の趣旨を踏まえて均衡を考慮した事項について、労働契約法4条1項の趣旨を踏まえて労働者の理解を深めるため、また、労使間の検討の契機とするため、使用者に十分な説明をするよう促していく措置を講じることが適当とされました。

本報告書では、このほかにも有期特措法や多様な正社員に関しても言及されています。

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参考リンク

「多様化する労働契約のルールに関する検討会」の報告書を公表します(厚生労働省HP)