第186回労働政策審議会労働条件分科会でこれまでの議論を整理した資料が公開されました。今回はその資料の中で、中でも大きな改正が見込まれている裁量労働制に関する部分についてみていきたいと思います。

第1に、企画業務型裁量労働制や専門業務型裁量労働制の対象業務の範囲については、現行のものの明確化等による対応が検討されているほかは、「金融機関において、顧客に対し、資金調達方法や合併、買収等に関する考案及び助言をする業務」が追加されるかどうかが検討されています。対象業務については、この資料を見る限りでは大きく拡大されることはないと思われます。

第2に、労働者が理解・納得した上での制度の適用と裁量の確保に関して、適用される賃金・評価制度を変更しようとする場合に、使用者が労使委員会に変更内容について説明を行うことなどが検討されています。

また、専門業務型裁量労働制について、本人同意を得ること、同意をしなかった場合に不利益取扱いをしないこと、その際に、使用者が労働者に対し制度概要等について説明することが適当であること等を示すことなどが検討されています。これは報道でも取り上げられているところで、改正される可能性が高い部分といえます。そして、一度は同意した場合でも、その撤回の手続を定めること、同意を撤回した場合に不利益取扱いをしてはならないことを示すことなどが検討されています。

さらに、業務量のコントロール等を通じた裁量の確保のため、裁量労働制は、始業・終業時刻その他の時間配分の決定を労働者に委ねる制度であること、また、労働者から時間配分の決定等に関する裁量が失われた場合には、労働時間のみなしの効果は生じないものであることに留意することを示すことが検討されています。

第3に、健康と処遇の確保に関して、健康・福祉確保措置の追加(勤務間インターバルの確保、深夜業の回数制限、労働時間の上限措置、医師の面接指導)等を行うことが検討されています。なお、現在においても「労働時間の状況」は把握すべきものとされていますが、その概念およびその把握方法が労働安全衛生法と同一のものであることを示すべきとされています。

また、みなし労働時間の設定に当たっては対象業務の内容、賃金・評価制度を考慮して適切な水準とする必要があることや対象労働者に適用される賃金・評価制度において相応の処遇を確保する必要があることが検討されています。

第4に、労使コミュニケーションの促進を通じた適正な制度運用を図るため、決議に先立って、使用者が労使委員会に対象労働者に適用される賃金・評価制度の内容について説明すること、また、労使委員会に制度の実施状況の把握および運用の改善等を行うことなどを求めることが検討されています。

また、労使委員会の開催頻度を6か月以内に1回以上とすること、労働者側委員の選出手続の適正化などが検討されています。

最後に行政の関与等については、現在6か月以内ごとに行うこととされている企画型の定期報告の頻度を初回は6か月以内に1回、その後1年に1回とすること、健康・福祉確保措置の実施状況等に関する書類を労働者ごとに作成し、保存することなどが検討されています。

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参考リンク

第186回労働政策審議会労働条件分科会(構成労働省HP)