今日の記事、ざっくり言うと・・・

  • 厚生労働省に「柔軟な働き方に関する検討会」が設置
  • 今回は「副業や兼業」に関して、本審議会で提示された資料を元に、副業・兼業をする場合の社会保険の適用について確認する
  • 現行の社会保険の適用は単一の事業場で勤務する従業員を前提にしており、給付額が本来の所得補償額に比べて不十分であったり、正社員並みの労働時間にかかわらず社会保険に加入できないといった事態が生じる

厚生労働省に「柔軟な働き方に関する検討会」が設置されました。これは、働き方改革を進める上で、柔軟な働き方がしやすい環境を整備することが重要であることから、働き方改革実行計画を踏まえ、これらの実態を把握しつつ、普及に当たっての課題等を整理するとともに、ガイドラインの策定等に向けて、検討を行うために開催されるものです。

本審議会での議論は今後取り上げることとして、今回は「副業や兼業」に関して、本審議会で提示された資料を元に、副業・兼業をする場合の社会保険の適用について確認することにしましょう。

1.労災保険

労災保険制度は、①労働者の就業形態にかかわらず、②事故が発生した事業主の災害補償責任を担保するものです。そのため、複数就業者にも労災保険は適用されますが、複数就業者への労災保険給付額については、事故が発生した就業先の賃金分のみを算定基礎とされます。このため、全ての就業先の賃金合算分を補償することはできないことになります。

2.雇用保険

雇用保険は、適用事業に雇用される労働者を被保険者とします。ただし、①1週間の所定労働時間が20時間未満である者、②同一の事業主に継続して31日以上雇用されることが見込まれない者については被保険者となりません(適用除外)。

したがって、同一の事業主の下で、週所定労働時間20時間以上であれば、雇用保険は適用されることになりますが、週所定労働時間20時間未満であるときは、複数の雇用関係を合算して週所定労働時間20時間以上となっても、雇用保険は適用されません。

3.健康保険・厚生年金保険

社会保険の適用に当たり、適用要件は事業所ごとに判断されます。このため、複数の雇用関係に基づき複数の事業所で勤務する者が、いずれの事業所においても適用要件を満たさない場合、労働時間等を合算して適用要件を満たしたとしても、社会保険は適用されません。

適用要件については、簡単に言うと、短時間労働者の場合、大企業(従業員501人以上)にあっては、週所定労働時間20時間以上、所定内賃金月額8.8万円以上、中小企業の場合は、週所定労働時間30時間以上(ただし、中小企業であっても、短時間労働者の適用について労使合意があれば、大企業と同様の取扱いとなる。)等の一定の要件を満たす場合に適用されます。

なお、短時間労働者に対する社会保険の適用拡大については、平成31年9月までに行うこととされています。

このように、現行の社会保険の適用は単一の事業場で勤務する従業員を前提にしており、給付額が本来の所得補償額に比べて不十分であったり、正社員並みの労働時間にかかわらず社会保険に加入できないといった事態が生じます。この面から、既にモデル就業規則の改定を行っている厚労省の動きは、拙速と言わざるをえないわけですが、人手不足のため副業として雇入れる場合には、上記のような点に十分留意するべきでしょう。

参考リンク

第1回 柔軟な働き方に関する検討会(厚生労働省HP)

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