世界の労働基準監督署からVOL021:足利労働基準監督署

労働基準法施行規則の改正案が労働政策審議会の部会に諮問されました。

今回の改正の趣旨は、労働基準法では、賃金は、原則、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならないとされており、例外的に労働基準法施行規則で、労働者の同意を得た場合には、①当該労働者が指定する銀行その他の金融機関に対する当該労働者の預金又は貯金への振込み等により支払うことも認められています。

今般、これに加え、労働者の同意を得た上で、一定の要件を満たした場合には、労働者の資金移動業者の口座への賃金支払を可能とすることとされました。

すなわち、賃金の支払方法として、労働者の同意を得た場合には、資金決済法36条の2第2項に規定する「第二種資金移動業」を営む資金決済法第2条第3項に規定する資金移動業者であって、次の①~⑧の要件を満たすものとして厚生労働大臣の指定を受けた者(以下「指定資金移動業者」という。)のうち当該労働者が指定するものの第二種資金移動業に係る口座への資金移動により賃金を支払うことを可能となります。

  1. 賃金支払に係る口座の残高(以下「口座残高」という。)の上限額を100万円以下に設定していること又は100万円を超えた場合でも速やかに100万円以下にするための措置を講じていること。
  2. 破綻などにより口座残高の受取が困難となったときに、労働者に口座残高の全額を速やかに弁済することを保証する仕組みを有していること。
  3. 労働者の意に反する不正な為替取引その他の当該労働者の責めに帰すことができない理由により口座残高に損失が生じたときに、その損失を補償する仕組みを有していること。
  4. 最後に口座残高が変動した日から、特段の事情がない限り、少なくとも10年間は労働者が口座残高を受け取ることができるための措置を講じていること。
  5. 賃金支払に係る口座への資金移動が1円単位でできる措置を講じていること。
  6. ATMを利用すること等、通貨で賃金の受取ができる手段により、1円単位で賃金の受取ができるための措置及び少なくとも毎月1回はATMの利用手数料等の負担なく賃金の受取ができるための措置を講じていること。
  7. 賃金の支払に関する業務の実施状況及び財務状況を適時に厚生労働大臣に報告できる体制を有すること。
  8. 賃金の支払に係る業務を適正かつ確実に行うことができる技術的能力を有し、かつ、十分な社会的信用を有すること。

資金移動業者の口座への賃金支払を行う場合には、労働者が銀行口座等への賃金支払も併せて選択できるようにするとともに、当該労働者に対し、資金移動業者の口座への賃金支払について必要な事項を説明した上で、当該労働者の同意を得なければなりません。

また、厚生労働大臣の指定を受けようとする資金移動業者は、上記1~8の要件を満たすことを証する書類を添えて、申請書を厚生労働大臣に提出しなければなりません。さらに、指定の要件に係る事項に変更があったときはあらかじめ厚生労働大臣に届け出なければならないとされました。そのほか、資金決済法で定められた変更登録・変更の届出を行ったときは、遅滞なく厚生労働大臣に届け出なければならないとされています。

厚生労働大臣は、賃金の支払に関する業務の適正かつ確実な実施を確保するために必要があると認めるときは、指定資金移動業者に対し、賃金の支払に関する業務の実施状況及び財務状況に関し報告を求め、又は必要な措置を求めることができます。また、指定資金移動業者が次のいずれかに該当するときは、その指定を取り消すことができることされています。指定の取消しを行ったときは、その旨が公告されます。

  • 資金決済法第55条又は第56条第1項若しくは第2項の規定による処分が行われたとき
  • 指定の要件を満たさなくなったとき
  • 不正の手段により指定を受けたとき

本改正は令和5年4月1日に施行される予定です。

お問い合わせはお気軽に。043-245-2288

参考リンク

第181回労働政策審議会労働条件分科会(資料)(厚生労働省HP)