現在厚生労働省内の審議会で資金移動業者の口座への賃金支払の解禁が議論されています。そこで、今回は、審議会で示された資料などを参考に、今後の動向について考えてみたいと思います。

今回の改正議論の発端は、成長戦略フォローアップ(令和2年7月17日閣議決定)および外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策(令和2年度改訂)です。前者においては、「賃金の資金移動業者の口座への支払について、賃金の確実な支払等の労働者保護が図られるよう、資金移動業者が破綻した場合に十分な額が早期に労働者に支払われる保証制度等のスキームを構築しつつ、労使団体と協議の上、2020年度できるだけ早期の制度化を図る」との方針が示されました。後者においても、同様の指摘がなされています。

そして、現在のところ主な課題は次とおりされています。

  1. 資金保全
    • 賃金について、資金移動業者が破綻した場合に、①十分な額が、②早期に、労働者に支払われる仕組み(現行の資金決済法の仕組みでは、供託金が還付されるまで、債権申出や配当表確定の手続きに約半年かかる)
  2. 不正引き出し等への対応
    • セキュリティ不備による不正引出し等への対策や補償の仕組み(補償方針については、今後施行される予定である改正資金決済法において、規定されている)
  3. 換金性
    • 賃金は通貨払いが原則であることを踏まえれば、適時に換金(出金)できることが必要
  4. その他
    • 厳格な本人確認等、賃金支払業務を適正かつ確実に行うことができる体制を有していること

通貨払い原則は維持したままとなるようですが、当初今年度中の導入を目指すとしていたことから、今後この議論は加速することになりそうです。

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参考リンク

第165回労働政策審議会労働条件分科会(資料)(厚生労働省HP)