正職員に対して賞与を支給する一方でアルバイト職員に対して賞与を支給しないという労働条件の相違が旧労働契約法20条にいう不合理と認められるかどうかを争った裁判の最高裁判決が10月13日に出されました。さらに同日、正社員に対して退職金を支給する一方で契約社員(社内では「契約社員B」という区分)に対して退職金を支給しないという労働条件の相違が同法同条いう不合理と認められるかどうかを争った裁判の最高裁判決が出されました。

労働契約法20条では,「有期労働契約を締結した労働者と無期労働契約を締結した労働者の労働条件の格差が問題となっていたこと等を踏まえ,有期労働契約を締結した労働者の公正な処遇を図るため,その労働条件につき,期間の定めがあることにより不合理なものとすることを禁止したもの」であり、その判断にあたっては「労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(職務の内容)、当該職務の内容及び配置の変更その他の事情を考慮するものとされています。

前者の判決では会社の正職員に対する「賞与の性質やこれを支給する目的を踏まえて,教室事務員である正職員とアルバイト職員の職務の内容等を考慮すれば,正職員に対する賞与の支給額がおおむね通年で基本給の4.6か月分であり,そこに労務の対価の後払いや一律の功労報償の趣旨が含まれることや,正職員に準ずるものとされる契約職員に対して正職員の約80%に相当する賞与が支給されていたこと」、アルバイト職員に対する「年間の支給額が平成25年4月に新規採用された正職員の基本給及び賞与の合計額と比較して55%程度の水準にとどまることをしんしゃくしても」,教室事務員である正職員とアルバイト職員との間に「賞与に係る労働条件の相違があることは,不合理であるとまで評価することができるものとはいえない」として、アルバイト職員に対する賞与の不支給を認容する判決となりました。

後者では、「正社員に対する退職金が有する複合的な性質やこれを支給する目的を踏まえて,売店業務に従事する正社員と契約社員Bの職務の内容等を考慮すれば,契約社員Bの有期労働契約が原則として更新するものとされ,定年が65歳と定められるなど,必ずしも短期雇用を前提としていたものとはいえず,第1審原告らがいずれも10年前後の勤続期間を有していることをしんしゃくしても,両者の間に退職金の支給の有無に係る労働条件の相違があることは,不合理であるとまで評価することができるものとはいえない」として、契約社員に対する退職金の不支給を認容する判決となりました。

このように、上記2判決では結果として賞与および退職金に関する待遇の違いについて、職務の内容等の違いを勘案してこれを容認(不合理とはいえないもの)と判断しました。もちろんこれは、形式的にアルバイトとか契約社員といった社員区分が重要なのではありませんので、安易な理解をしないよう注意が必要です。

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参考リンク

令和2年10月13日 第三小法廷判決(東京メトロコマース事件、PDF)

令和2年10月13日 第三小法廷判決(通称「大阪医科薬科大学事件」、PDF)