今回の記事をざっくり言うと・・・

  • 厚生労働省が「過労死防止対策白書」を公開
  • 脳・心臓疾患に係る請求件数は、過去10年余りの間、700件台後半から900件台前半の間で推移
  • 支給決定件数は、平成14年度に300件を超えて以降、200件台後半~300件台で推移

image101厚生労働省が「過労死防止対策白書」を公開しました。この白書は、過労死等防止対策推進法に基づき、国会に報告を行う法定白書で、今回が初めての報告になります。そこで、今回は、この白書の概要について、見ていくことにしましょう。

まず、過労死等の現状です。

脳・心臓疾患に係る請求件数は、過去10年余りの間、700件台後半から900件台前半の間で推移しており、その支給決定件数は、平成14年度に300件を超えて以降、200件台後半~300件台で推移しています。業種別に見ると、請求件数、支給決定件数ともに「運輸業,郵便業」が最多となっています。

また、精神障害に係る請求件数は、平成21年度に1,000件を超えて以降、1,000件台で推移しており、その支給決定件数は、平成24年度以降400件台で推移しています。業種別に見ると、請求件数、支給決定件数ともに「製造業」が最多となっています。

ところで、過労死等の最も重要な要因は、長時間にわたる過重な労働と考えられています。

そこで、白書では、労働時間の状況についても取り上げています。

まず、平均的な1か月の時間外労働時間が45時間超と回答した企業の割合は、①運輸業、郵便業(14.0%)、②宿泊業、飲食サービス業(3.7%)、③卸売業、小売業(3.4%)の順に多く、時間外労働時間が最も長かった月において、80時間超と回答した企業の割合は、①情報通信業(44.4%)、②学術研究、専門・技術サービス業(40.5%)、③運輸業、郵便業(38.4%)の順に多くなっています。

残業が発生する理由としては、「業務量が多いため」、「人員が不足しているため」、「業務の繁閑の差が大きいため」などが多く挙げられており、業種別では、、情報通信業はどの項目も概ね上位に入っており、「人員が不足しているため」と挙げる業種としては、宿泊業、飲食サービス業が最も多くなっています。

最後に疲労の蓄積度やストレスについてみていきましょう。

疲労の蓄積度が「高い(高いと非常に高いの合計) 」と判定される者の割合が高い業種は、順に①宿泊業,飲食サービス業(40.3%)、②教育,学習支援業(38.9%)、③運輸業,郵便業(38.0%)となっており、ストレスが「高い(4点以上) 」と判定される者の割合の高い業種は、順に①医療、福祉(41.6%)、②サービス業(他に分類されないもの)(39.8%)、③卸売業、小売業(39.2%)、③宿泊業、飲食サービス業(39.2%)となっています。

厚生労働省では、11月を「過労死等防止啓発月間」と位置づけて、「過重労働解消キャンペーン」を実施することをすでに発表しており、この期間中は重点監督等も行われるとされています。企業としても、これをポジティブなきっかけととらえて、労働時間の削減と生産性向上に向けた取り組みを検討してみてはいかがでしょうか。

関連リンク

「過労死等防止対策白書」を公表します~過労死等の現状や過労死等の防止に講じた施策の状況を、白書として初めて取りまとめました~(厚生労働省HP)

MORI社会保険労務士・行政書士事務所(千葉県千葉市)では、日々生じる従業員に関する問題やちょっとした労働法に関する疑問、他社事例について、気軽に電話やメールで相談できる「労務相談」業務の依頼を受託しています。もちろん社会保険の適用拡大に関するご相談、給与計算(年末調整)、労働・社会保険、就業規則、各種許認可業務等も対応します。

toiawase