世界のハローワークからVOL026:ハローワーク高崎

雇用保険制度研究会が中間報告を公表しました。本中間整理では、本来雇用保険制度が果たすべき役割や保護すべき対象は何かを整理し、今後の制度運営を考えるための材料や選択肢を提示したものです。

本中間整理では、はじめに、雇用保険制度を構成する考え方、構造について検討しています。ここで、「一般に保険とは、同種類の偶発的な事故による危険にさらされている人々が、この危険の分散を図るために集団を構成するものであり、雇用保険では『自らの労働により賃金を得て生計を立てている労働者(生計維持者)が失業した場合の生活の安定を図る制度』という考え方をとっている」ことが確認されました。この点は後でもでてきますので、留意しておいてください。

そのうえで、「雇用保険制度をとりまく労働市場や社会経済情勢の変化」に触れますが、ここで注目されるのは、コロナの影響により休業する労働者の収入への影響は、特に宿泊・飲食サービス業や卸売・小売業の中高年の女性パートや学生バイトを中心に生じ、雇用保険の適用対象となっていない労働者についてもセーフティネットの必要性があったことが示唆されることが指摘されている点でしょう。これは雇用保険の加入基準を緩和する議論につながる議論で、次に「雇用のセーフティネットとしての雇用保険制度の在り方」で、「同種類の危険にさらされている集団」という見出しの節で、もう少し具体的に議論されています。

そこで、指摘されていることは、「生計維持という理念の具体的な判断基準として、週所定労働時間20時間とする必然性はないのではないか」など、現在の加入基準の設定について言及するもの、「労働時間ではなく、収入で適用を線引きすることも考えられるのではないか」など、新たな加入基準の設定について言及するものなどがあります。一方で、「週所定労働時間20時間未満の短時間労働者を雇用保険に包摂していくと、保険集団としての同質性が薄れていくことになるのではないか」などの疑問も呈されています。この「保険集団としての同質性」は、冒頭で指摘したところで、雇用保険の根幹に関わる問題ではないかというポイントです。しかし、基本的な方針は、加入基準の緩和ないし撤廃に向いているように思われます。

次に「各論」をみてみましょう。ここでは、各給付について触れられていますが、特に基本手当については、所定給付日数を伸ばすことや給付制限期間を撤廃することに慎重であるべきと指摘するものがありました。一部メディアでは、後者の給付制限を撤廃するとの首相の意向が報道されもしましたが、必ずしもその方向で話が進んでるとまではいえないようです。

また、「オンラインによる失業認定」についてはも検討事項とする一方で、失業認定と職業相談が有効に連携することが再就職促進のために重要であることから、初回の職業相談を対面で実施することに「重要な意義がある」とする意見も見られます。

このように本中間整理は、まだ議論の途中である論点も含まれていますが、今後の動向を伺ううえでも重要な内容が含まれていると言えます。

お問い合わせはお気軽に。043-245-2288

参考リンク

雇用保険制度研究会 中間整理(厚生労働省HP)