厚生労働省は、令和2年度の「過労死等の労災補償状況」を公表しましたので、今回はそのポイントをみていくことにしましょう。いうまでもなく、過労死はあってはならないことですので、傾向を把握することで防止に役立てるようにしてください。

はじめに脳・心臓疾患に関する事案の労災補償状況についてみると、請求件数は784件で、前年度比152件の減、支給決定件数は194件で前年度比22件の減となり、うち死亡件数は前年度比19件減の67件であした。このように、脳・心臓疾患に関する事案は前年と比べて減少しましたが、これは新型コロナウイルス感染拡大により労働時間が全体的に減少したことが大きな理由になっていると考えられます。

業種別では、請求件数で「道路貨物運送業」118件と最も多く、支給決定件数も55件で最多でした。また、年齢別では、請求件数は「50~59歳」264件、「60歳以上」261件の順で多く、支給決定件数は「50~59歳」65件、「40~49歳」64件の順に多いという結果でした。このように運送業の中高年に過重労働による脳・心臓疾患が多いのは、近年の傾向です。

次に、精神障害に関する事案についてみると、請求件数は2,051件で前年度比9件の減となり、うち未遂を含む自殺の件数は前年度比47件減の155件でした。また、支給決定件数は608件で前年度比99件の増となり、うち未遂を含む自殺の件数は前年度比7件減の81件でした。

業種別では、請求件数、支給決定件数ともに「社会保険・社会福祉・介護事業」の275件、79件が最多となっていますが、職種別では、請求件数、支給決定件数ともに「一般事務従事者」の323件、57件が最多でした。また、年齢別では、請求件数は「40~49歳」597件、「30~39歳」490件、「20~29歳」448件の順で多く、支給決定件数は「40~49歳」174件、「30~39歳」169件、「20~29歳」132件の順に多いという結果でした。このように、精神障害については若年層に多い傾向も近年続いています。

「出来事」別の支給決定件数は、「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」99件、「悲惨な事故や災害の体験、目撃をした」83件、「同僚等から、暴行又は(ひどい)いじめ・嫌がらせを受けた」71件の順でした。

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参考リンク

令和2年度「過労死等の労災補償状況」を公表します(厚生労働省HP)