image127今年6月に成立・公布された「過労死等防止対策推進法」では、11月を過労死等防止啓発月間と位置づけており、厚生労働省は、今年11月に「過重労働解消キャンペーン」を実施すると発表しました。具体的な取り組みとしては、次のものがあります。

(1)労使の主体的な取組の促進

キャンペーンに先立ち、厚生労働大臣らが、使用者団体や労働組合に対し、長時間労働削減に向けた取組に関する積極的な周知・啓発などの実施について、協力要請を行い、労使の主体的な取組を促します。

(2)重点監督の実施

ア 監督の対象とする事業場等

  1.  労働基準監督署およびハローワークに寄せられた相談等を端緒に、離職率が極端に高いなど若者の「使い捨て」が疑われる企業等を把握し、重点監督を実施。なお、監督指導の結果、法違反の是正が図られない場合は、是正が認められるまでハローワークにおける職業紹介の対象としないとされています。
  2.  長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場等に対して重点監督を実施

イ 重点的に確認する事項

  1.  時間外・休日労働が36協定の範囲内であるかについて確認し、法違反が認められた場合は是正指導
  2.  賃金不払残業がないかについて確認し、法違反が認められた場合は是正指導
  3. 不適切な労働時間管理については、労働時間を適正に把握するよう指導
  4. 長時間労働者については、医師による面接指導等、健康確保措置が確実に講じられるよう指導

ウ 書類送検
重大・悪質な違反が確認された場合は、送検し、公表します。

(3)電話相談の実施

フリーダイヤルによる全国一斉の「過重労働解消相談ダイヤル」を実施し、都道府県労働局の担当官が、相談に対する指導・助言を行います。

(4)周知・啓発の実施

使用者等へのリーフレットの配布、広報誌、ホームページの活用により、キャンペーンの趣旨などについて広く国民に周知を図ります。

(5)企業における自主的な過重労働防止対策を推進します

事業主、企業の労務担当責任者などを対象に、全国8か所(北海道、宮城、東京、愛知、大阪、広島、香川、福岡)で計10回、「過重労働解消のためのセミナー」を実施します。

以上のように、昨年9月に実施された「若者の『使い捨て』が疑われる企業等への重点監督」とほぼ同様の内容といえますが、今回はパワーハラスメントについては特段の記載がありません。おそらく、パワーハラスメントは本質的にはともかく、労働基準法で個別の取締り規定を欠く現状では、周知・啓発以上のことはできないことから、外されたのではないかと考えています。

結果的には、長時間労働に絞った指導・監督が行われる見込みです。各都道府県によっても具体的な実施方法は違いがあると思われますが、あえて予想をするのであれば、たとえば昨年の電話相談で相談件数の多かった、製造業や商業などは臨検の対象となる可能性があります。また、アンケート形式での文書指導が行われる都道府県もあるでしょう。

監督指導を受けるのは決して気分のいいものではないと思いますが、これも一つのきっかけと前向きに捉えて、労務管理の見直しなどをすすめてはいかがでしょうか。

ちなみに、11月が「過労死等防止啓発月間」となったのは、11月に勤労感謝の日があるからと言われています。

■関連リンク

「過重労働解消キャンペーン」を11月に実施します(厚生労働省HP)

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