今回の記事、ざっくり言うと・・・

  • 報道されている同一労働同一賃金推進法が今国会で成立する見込み
  • 本法は、労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策に関して、基本理念を定め、国の責務を明らかにすることが目的とされている

image058今回は、国会での労働者派遣法の議論がすったもんだやっている間に、降ってわいたように成立の見込みとなった「同一労働同一賃金推進法」の内容について、みてみましょう。

報道によれば、本法は、維新の党が成立を求めていた法案で、同党が労働者派遣法に賛成することの引き換えに、与党が修正の上成立を了承したものです。

本法は、その目的として、「雇用形態により労働者の待遇や雇用の安定性について格差が存在し、それが社会における格差の固定化につながることが懸念されていることに鑑み、それらの状況を是正するため、労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策に関し、基本理念を定め、国の責務等を明らかにする」ことを掲げています。つまり、本法は、過労死防止法と同様、直接事業主に義務を課すものではなく、国の施策の指針となるものといえます。

そして、基本理念として、次に掲げる事項を旨として施策を行われなければならないこととされています。

  1. 労働者が、その雇用形態にかかわらずその従事する職務に応じた待遇を受けることができるようにすること。
  2. 正規労働者以外の労働者が正規労働者となることを含め、労働者がその意欲及び能力に応じて自らの希望する雇用形態により就労する機会が与えられるようにすること。
  3. 労働者が主体的に職業生活設計を行い、自らの選択に応じ充実した職業生活を営むことができるようにすること。

なお、法案要綱では、「正規労働者」をカッコ書きで「期間の定めのない労働契約を締結している労働者(派遣労働者を除く。)であって一週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される他の労働者に比して短くないものをいう」としています。これは、もしかすると、いわゆる正社員を、法律上初めて定義したものかもしれません。

また、国会で議論がありましたが、「正規労働者」から派遣労働者が明確に除外されている点にも注目するべきでしょう。

このように、法律自体では特に事業主に措置義務などを課しているものではありませんが、今後の政策の指針として行政指導などに影響が生じることは考えられます。また、「職務に応じた待遇」とともに、本法案には、正社員への転換に関する条文も多く盛り込まれており、正社員転換に関する助成金などに反映されるかもしれません。

■関連リンク

衆法第189回国会 22労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策の推進に関する法律案

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