今日の記事、ざっくり言うと…

  • 厚生労働省が、「同一労働同一賃金の法整備に向けた論点整理」等を内容とする報告書がとりまとめ、公表
  • 今回は、委員それぞれの専門的知見に基づき、法整備に関する各論点について踏まえるべき議論の前提、あ りうる選択肢やその利害得失などをできるだけ幅広く挙げ、それを「論点整理」の形で整理 して示したもの
  • 報告書では、1.パートタイム労働法制及び有期労働契約法制関係と、2.労働者派遣法制関係が取り上げられている

厚生労働省が、「同一労働同一賃金の法整備に向けた論点整理」等を内容とする報告書がとりまとめ、公表しました。今後の法改正動向を占うためにも、取り上げたいと思います。

なお、今回の報告書では、法整備の議論について、司法判断の根拠規定の整備などの論点についてそれぞれあり得る選択肢が幅広く、その中でどれを採りどれ を採るべきでないかは政策的な価値判断によるところも大きいため、今回は、委員それぞれの専門的知見に基づき、法整備に関する各論点について踏まえるべき議論の前提、あ りうる選択肢やその利害得失などをできるだけ幅広く挙げ、それを「論点整理」の形で整理 して示したものです。

報告書は、1.パートタイム労働法制及び有期労働契約法制関係と、2.労働者派遣法制関係に大きく分かれており、1.では次の内容が取り上げられています。

  1. パートタイム労働法制・有期労働契約法制における司法判断の根拠規定の整備 関係
  2. パートタイム労働法制・有期労働契約法制における説明義務の整備/いわゆる 「立証責任」関係
  3. その他(履行確保の在り方等)

また、2.では次の内容が取り上げられています。

  1. 労働者派遣法制における司法判断の根拠規定の整備関係
  2. 派遣元事業主・派遣先の責任・協力の在り方、労働者派遣法制における説明義務の整備関係
  3. その他(履行確保の在り方等)

ところで、多くの企業では、来年から無期転換申込権が本格的に行使されることを前に、無期転換後の処遇等について検討しているのではないでしょうか。報告書では、無期転換後の労働者の処遇に関して、注目すべき内容も盛り込まれています。

たとえば、均等・均衡待遇に関する現行法制定(不合理な待遇差の禁止規定)について、比較対象労働者をどのように定義するかという論点について、特に無期転換した後の元有期契約労働者の位置付けに関 して、次のような議論がありました。

  • 基本的に比較の対象となるのは「通常の労働者」(パートタイム労働法8条)ではな いか。
  • 無期転換した元有期契約労働者が法の保護対象から外れるのは問題。この人たちは、 本来、正規労働者の賃金・評価体系との共通化に、相対的になじみやすい集団である 可能性が高い。ただ、労働契約法による無期転換の事例が出始める 2018 年が目前に 迫るなか、唐突な規制強化は雇止めにつながる懸念が大きい。
  • 雇止めの懸念を踏まえれば、無期転換後の元有期契約労働者の検討については、時 間的猶予をみながら検討することが適切。

現在の不合理な待遇差の禁止規定は、労働契約法により有期契約労働者、パートタイム労働法によりパートタイム労働者を対象としており、これらから外れる労働者、たとえばフルタイムの有期契約労働者が無期転換をした場合、直接対象にはならないことになります。

上記の議論はそれについて指摘したものですが、この部分からは、少なくともすぐに法改正が行われるということではないようです。しかし、将来的には法改正により、無期転換後の元有期契約労働者にもこの法規制が適用されることも考えられますので、無期転換後の処遇の検討に当たっては、この点にも留意するべきでしょう。

参考リンク

同一労働同一賃金の実現に向けた検討会 報告書(厚生労働省HP)

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