• 今回は中央労働委員会が公表した不当労働行為事件審査・再審査事件の命令書を参考に事件を紹介
  • 本件は、組合掲示板及び組合事務室の新規貸与を議題とする分会の団体交渉申入れを会社が拒否したことが不当労働行為であるとして、申立てがあった事件で、中労委は、分会の本件再審査申立てを棄却

中央労働委員会は、不当労働行為事件審査・再審査事件で交付した命令書を公表しています。これらの資料は、労働組合をめぐる事件の実例として参考になります。そこで、今回は最近公開された資料をもとに、事件を紹介したいと思います。

この事件は、組合掲示板及び組合事務室の新規貸与を議題とする分会の団体交渉申入れを会社が拒否したことが不当労働行為であるとして、申立てがあった事案です。

初審愛知県労委は、分会が会社に団体交渉を申し入れた時点において分会の組合員に現に使用者と雇用関係にある労働者が存在しないこと等を理由に、「申立人の主張する事実が不当労働行為に該当しないことが明らかであるとき」(労委規則第33条第1項第5号)に該当するとして、分会の本件救済申立てを却下しました。

これを不服として労働組合側が再審査請求を求めたのが本事件です。

しかし、中労委は次のように述べて、労働組合の請求を初審却下決定を維持し、労働組合側の申し立てを棄却しました。

まず、本命令では、会社と組合員らの雇用関係は終了していたこと、また、本件団交申入れに係る交渉議題は専ら組合活動に関する事項であり、組合員と会社との間の解雇又は退職の是非やそれらに関する条件等の問題ではないことから、本件団交申入れの時点においては、労働組合と会社は、本件団交申入れに係る議題事項との関係では、団体交渉の前提となるべき労使関係を欠いていたというべきであり、労働組合は使用者が団体交渉を義務付けられる相手方には当たらないとされました。

なお、組合が労働組合法第7条第2号違反と主張する点については、会社が分会が実在することについて説明を求めた(組合には現に従業員である組合員も、従業員に復帰して業務に従事すべき組合員もおらず、また、17年以上も分会役員が選出されない状態が続いていた)のに対して、組合は、会社の要請に対し全く応答しなかったとの経緯に照らすと、本件団交申入れに応じなかった会社の対応にはそれ相応の理由と根拠があるから、同法違反となることを否定しました。

参考リンク

E社(愛知便宜供与団交)不当労働行為再審査事件(平成27年(不再)第54号)命令書交付について

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