令和6年6月以降の処遇改善加算の一本化および加算率の引上げについて、厚生労働省が資料を作成しましたので、今回はその資料に基に、改正の概要をみていくことにしましょう。

今回の加算率の引上げは、介護現場で働く方々にとって、令和6年度に2.5%、令和7年度に2.0%のベースアップへと確実につながるよう行われるものです。そこで、現行の介護職員処遇改善加算、介護職員等特定処遇改善加算、介護職員等ベースアップ等支援加算の各加算・各区分の要件および加算率を組み合わせた下図の4段階の「介護職員等処遇改善加算」に一本化を行うものとされました。

一本化後の加算については、介護職員への配分を基本とし、特に経験・技能のある職員に重点的に配分することになりますが、事業所内での柔軟な職種間配分を認めるものとされています。また、人材確保に向けてより効果的な要件とする等の観点から、月額賃金の改善に関する要件および職場環境等要件の見直しが行われます。なお、令和6年度末までの経過措置期間を設け、加算率並びに月額賃金改善要件および職場環境等要件に関する激変緩和措置を講じるものとされました。

新加算を算定するためには以下の3種類の要件を満たすことが必要です。

要件1:キャリアパス要件

  • キャリアパス要件Ⅰ(任用要件・賃金体系)→新加算Ⅰ~Ⅳ
    • R6年度中は年度内の対応の誓約で可
    • 介護職員について、職位、職責、職務内容等に応じた任用等の要件を定め、それらに応じた賃金体系を整備する
  • キャリアパス要件Ⅱ(研修の実施等)→新加算Ⅰ~Ⅳ
    • R6年度中は年度内の対応の誓約で可
    • 介護職員の資質向上の目標や以下のいずれかに関する具体的な計画を策定し、当該計画に係る研修の実施又は研修の機会を確保する
      1. 研修機会の提供又は技術指導等の実施、介護職員の能力評価
      2. 資格取得のための支援(勤務シフトの調整、休暇の付与、費用の援助等)
  • キャリアパス要件Ⅲ(昇給の仕組み)→新加算Ⅰ~Ⅲ
    • R6年度中は年度内の対応の誓約で可
    • 介護職員について以下のいずれかの仕組みを整備する。
      1. 経験に応じて昇給する仕組み
      2. 資格等に応じて昇給する仕組み
      3. 一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組み
  • キャリアパス要件Ⅳ(改善後の賃金額)→新加算Ⅰ・Ⅱ
    • 令和6年度中は月額8万円の改善でも可
    • 経験・技能のある介護職員のうち1人以上は、賃金改善後の賃金額が年額440万円以上であること
    • 小規模事業所等で加算額全体が少額である場合などは、適用が免除されます。
  • キャリアパス要件Ⅴ(介護福祉士等の配置)
    • サービス類型ごとに一定割合以上の介護福祉士等を配置していること

要件2:月額賃金改善要件

  • 月額賃金改善要件Ⅰ(令和7年度から適用)
    • 新加算Ⅳ相当の加算額の2分の1以上を、月給(基本給又は決まって毎月支払われる手当)の改善に充てる。
    • 現在、加算による賃金改善の多くを一時金で行っている場合は、一時金の一部を基本給・毎月の手当に付け替える対応が必要になる場合があります。(賃金総額は一定のままで可)
  • 月額賃金改善要件Ⅱ(現行ベア加算未算定の場合のみ適用)
    • 前年度と比較して、現行のベースアップ等加算相当の加算額の3分の2以上の新たな基本給等の改善(月給の引上げ)を行う。
    • 新加算Ⅰ~Ⅳへの移行に伴い、現行ベア加算相当が新たに増える場合、新たに増えた加算額の3分の2以上、基本給・毎月の手当の新たな引上げを行う必要があります
  • 職場環境等要件(R6年度中は区分ごと1以上、取組の具体的な内容の公表は不要)
    • 6の区分ごとにそれぞれ2つ以上(生産性向上は3つ以上、うち一部は必須)取り組む。情報公表システム等で実施した取組の内容について具体的に公表する。
    • 6の区分ごとにそれぞれ1つ以上(生産性向上は2つ以上)取り組む。

新加算(Ⅰ~Ⅴ)では、加算による賃金改善の職種間配分ルールを統一します。介護職員への配分を基本とし、特に経験・技能のある職員に重点的に配分することとしますが、事業所内で柔軟な配分を認めるとされました。

このように令和6年6月以降の新加算は大きな制度変更がありますが、キャリアパス要件等では猶予措置も設けられていますので、これらの措置も活用しつつ、体制整備を行うことが大切です。

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参考リンク

介護職員の処遇改善(厚生労働省HP)