前回に引き続き「柔軟な働き方を実現するための措置」の内容についてみていきましょう。まず「テレワーク等」に関する内容をみていきましょう。
「テレワーク等」については、月に10日以上利用できる制度であることが求められてところ、「①1週間の所定労働日数が5日の労働者については、1か月につき10労働日以上とし、②1週間の所定労働日数が5日以外の労働者については、①の日数を基準としてその1週間の所定労働日数に応じた労働日とすることとされています」。また、「例えば1週間の所定労働日数が5日の労働者が2か月以上の期間利用を行った場合、平均して「1か月につき10労働日」以上の設定が認められていれば差し支えない」とされています。
もっとも、育介則75条の3第2号は、「利用することができる日数」を定めたもので、制度として10労働日利用できるようになっていればよいと解されますので、ある月が5日だったからといって、会社に次の月に15日以上のテレワーク等を認めなければならないわけではないでしょう。
次に、「労働者が就業しつつ子を養育することを容易にするための休暇(養育両立支援休暇)の付与」についてみてみましょう。そもそも子の看護等休暇との違いがわかりづらいところですが、A12によれば、「『養育両立支援休暇』は、3歳以上小学校就学前までの子を養育する労働者が就業しつつ子を養育することを容易にするための休暇」です。そして、その取得理由は、「就業しつつ子を養育するのに資するものであれば、いかなる目的に利用するかは労働者に委ねられることとな」り、たとえば、配偶者出産休暇や子の行事参加、子の看護等休暇と同じ取得事由、「通常保育所に子を迎えに行く配偶者が出張等で当該迎えができない日に時間単位で休暇を取得し保育所に子を迎えにいく、子が就学する小学校等の下見にいくなど」広く認められるものとされています(下図)。
次に、「保育施設の設置運営等」については、「保育施設の設置運営その他これに準ずる便宜の供与」(改正後の育介則 75 条の4)であり、「その他これに準ずる便宜の供与」には、例えば事業主がベビーシッターを手配し、かつ、そのベビーシッターに係る費用を補助することが含まれるとされています。
ところで、カフェテリアプランの一環として、ベビーシッターのサービス等の福利厚生サービスを選択・利用できるような場合については、上記の法令上の措置は講じたことになるとされました(A2-17)。
これらの「柔軟な働き方を実現するための措置」は、3歳以上小学校就学前の子を養育する労働者に対し、労働者の希望に応じてフルタイムで働くことができるよう、職場のニーズを把握した上で、2つ以上講じ、労働者が選択できるようにしなければなりません。その措置については、労働者の子が1歳11か月に達する日の翌々日から2歳11か月に達する日の翌日までに、
- 「柔軟な働き方を実現するための措置」の内容
- 「柔軟な働き方を実現するための措置」の内容の申出先
- 所定外労働の制限に関する制度、時間外労働の制限に関する制度及び深夜業の制限に関する制度
について、当該労働者に対して個別に周知するとともに意向確認を行う必要があります(A2-19)。なお、対象者を一堂に集めて行うことについては、制限されているわけではありませんが、その場合においても、①面談、②書面の交付、③FAXの送信または④電子メール等の送信の方法により行う必要があります。
ところで、施行日である令和7年 10 月1日時点において、3歳の誕生日の1か月前までの1年間に行わなければならない「個別の周知・意向確認」の対象となる子の範囲は、「令和4年11月1日から令和5年11月2日までに生まれた子」とされていますので、注意が必要です(A2-22)。すなわち、子の誕生日が令和4年10 月31日以前である場合、個別の周知・意向確認の必要はありません。
なお、「労使協定において、継続雇用期間が1年未満の労働者を利用対象から除外している企業において、子の3歳到達時点では継続雇用期間が1年未満であるものの、子が3歳6か月時点で継続雇用期間が1年に達し、「柔軟な働き方を実現するための措置」の利用の対象になる・・・労働者については、3歳の誕生日の1か月前までの1年間のいずれかの時点において個別の周知の措置を実施する必要があります」。ただし、意向確認の措置については、「子の3歳到達時点では「柔軟な働き方を実現するための措置」の利用が可能ではないことから、実施する必要はありません」。
参考リンク
育児・介護休業法が改正されました~令和7年4月1日から段階的に施行~(厚生労働省HP)