労災補償の対象となる疾病の範囲を定めた職業病リストを改正し、MOCA(3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン)の製造・取扱業務を健康管理手帳の交付対象に追加しました。MOCAは、ウレタン樹脂の硬化剤で防水材や床材などに使用されています。
労災保険行う制度は、労働者の業務上の事由、または通勤による傷病などに対して、必要な保険給付を行うものです。労災保険制度の補償対象となる疾病は、いわゆる「職業病リスト」に定められています。
「職業病リスト」は「労働基準法施行規則別表第1の2」と、これに基づく厚生労働大臣告示で構成されています。「職業病リスト」は、業務上疾病の範囲を明確にすることで、①被災された方の労災補償に関する請求を容易にする、②事業主の災害補償義務の履行を確保するなどの役割があります。また、業務と疾病との間に因果関係が確立していると認められた疾病が、「職業病リスト」に示されており、「職業病リスト」は、新しい医学的知見や疾病の発生状況などを踏まえ、定期的に見直しが行われています。なお、「職業病リスト」に示されていない疾病でも、業務と疾病との間に因果関係が認められる場合には、労災補償の対象となります。
そして、令和5年1月18日に、「職業病リスト」が改正され、MOCAにさらされる業務による尿路系腫瘍などが新たに追加されました。
また、MOCAの製造・取り扱い業務が健康管理手帳の交付対象業務に追加されました。
健康管理手帳制度とは、労働安全衛生法に基づき、がんやその他の重度の健康障害を生ずるおそれのある業務に従事したことのある人で、一定の要件に該当する方に対し、離職の際または離職の後に、手帳を交付し、国の費用で健康診断を行う制度です。
今回の改正により、MOCAを製造し、または取り扱う業務に2年以上従事した経験を有する方は、離職の際または離職の後に、所轄の都道府県労働局に必要な書類を添えて手帳の交付申請を行い、手帳の交付を受けた後は、無償でこの業務に関する健康診断を受診することができます。受診の方法、回数等の詳細は都道府県労働局から通知されることになります。
参考リンク
労災補償の対象となる疾病の範囲を定めた職業病リストを改正しました(厚生労働省HP)