令和5年度キャリアアップ助成金に関するQ&Aが公開されました。ここでは、特に利用が多い「正社員転換コース」についてみていくことにしましょう。
Q-1 キャリアアップ助成金の支給要件や助成メニュー等について、令和5年4月1日から変更はありますか。
A-1 令和5年4月1日から、各コースにおける支給要件等について一部改正しております。主な変更点は以下のとおりです。・・・なお、本変更は令和5年4月以降の取組(正社員化や規定改定、労働時間の延長等の取組)から適用されますので、取組・支給申請前に必ずご確認ください。
【正社員化コース】
○令和5年4月1日以降の取組より、生産性要件を満たした場合の加算措置を廃止しました。
〇キャリアアップ助成金と人材開発支援助成金の訓練を活用して正社員化する場合、加算の対象となる訓練が統合・拡充されます。
○人材開発支援助成金の特定の訓練の対象労働者の正社員化に限り、人材開発支援助成金の計画届とキャリアアップ計画書を一本化します(詳細はP29のQ-29ご参照)。
○有期実習型訓練修了者について、「賃金の額又は計算方法が正規雇用労働者と異なる雇用区分の就業規則等」の適用を受けている必要があるとして要件を変更しました。
以上を見る限りでは、今年度から生産性要件が廃止されることになりましたが、そのほか大きな改正はないといっておいでしょう。
次に見るのは、「全コース共通事項」で今回追加されたものです。
Q-10 常時10人以上雇用する事業所において、就業規則の改定を行う際の注意点はありますか。
A-10 常時10人以上雇用する事業所においては、就業規則の改定後、速やかに所轄の労働基準監督署長(以下「監督署」といいます。)へ届け出る必要があります(遅くともキャリアアップ助成金の支給申請前の届出が必要です。)。 また、基本給の増額等、労働条件の変更を行った場合、適切に就業規則等の規定内容へ反映させる必要があります。その他、賃金規定や賃金一覧表等、就業規則の本則では無い附則のみの改定の場合であっても、監督署への届出が必要です。
就業規則の改定をするタイミングと申請が重なる場合、特に4月は法改正が多く就業規則改定の対応が必要な場合が多いはずですので、注意が必要でしょう。
Q-18 「賃金の額または計算方法が正社員と異なる就業規則」には、昇給の有無が異なる場合(正社員あり、非正規雇用労働者なし)も該当しますか。
A-18 該当します。なお、適用される昇給幅が正社員と非正規雇用労働者間で異なる場合も対象となり得ます。(ただし、実態として同等の昇給が契約更新時に行われていた場合は、以下A-19のとおり、対象とはなりません。)
気になるのでA-19も見ておきましょう。
Q-19 就業規則等に定める給与形態(時給、日給、月給)が正社員と非正規雇用労働者で異なる場合、「賃金の計算方法が異なる」に該当しますか。
A-19 該当します。ただし、適用される就業規則等の規定に差があったとしても、実態として転換前後で対象労働者の雇用条件に一切の差が生じないような場合は、支給対象とはなりません。 例)正社員:月給制/契約社員(非正規):月給または時給制。その他賃金の差異無し。→月給制の契約社員は、対象労働者に該当しないこととなります。
※他方、賃金テーブルは同一でも、雇い入れ時点において、初期設定俸給が異なる場合(正社員は2級スタート、非正規は1級スタート)などで差があれば、支給対象となり得ます。
このように、形式的な規定の内容だけでなく、実態も勘案されることが明示されました。この辺りは、今後問題となり、不支給ないし減額されるケースが出てくると思われます。
Q-20 賞与について、正社員に適用する規則等では「原則支給する」と規定していますが、非正規雇用労働者に適用する規則等では、賞与支給がないことから、関連する規定自体がありません。この場合も「賃金の額または計算方法が正社員と異なる就業規則等が適用されている」に該当しますか。
A-20 該当し得ます。賞与に限らず、退職金や各種手当等であってもこのようにみなしますが、非正規雇用労働者には支給されない(単純な規定漏れでない)ことについて、確認を求める場合があります。
これも実質的に正社員と異なるといえるかどうかがチェックされることになる部分といえるでしょう。
次に見るのは、今回追加された「多様な正社員」への転換に関するものです。
Q-10 正社員と多様な正社員で、賞与の算定方法が異なる場合、対象者を多様な正社員に転換したとして支給が受けられますか。
A-10 キャリアアップ助成金における多様な正社員(勤務地限定正社員、職務限定正社員及び短時間正社員)は、「同一の事業主に雇用される正規雇用労働者の労働条件が適用されている労働者であること」が要件であることから、正社員と多様な正社員で、賞与の算定方法が異なる場合には支給を受けることはできません。
賞与の算定方法に関しても、正社員と同じものでなければなりません。
Q-26 正規雇用労働者の定義中「通常の労働者に適用される就業規則等(中略)が適用されている労働者であること」とはどのような要件なのでしょうか。
A-26 正規雇用労働者に適用される就業規則に定めのある「正規雇用労働者としての労働条件」(賃金の算定方法及び支給形態、賞与、退職金、休日、定期的な昇給や昇格の有無等)が適用されていることを要件としています。 例えば、就業規則には正社員について賞与が支給対象となる旨が記載されているにも関わらず、今回の転換対象者の労働条件通知書等には賞与の支給が無しと記載されている場合は、支給対象となりません。
有期労働契約の雇用契約書を流用したためにミスで「賞与なし」と記載してしまうケースも考えられますので、十分注意してください。
このように、キャリアアップ助成金は昨年10月1日以降はかなり厳しい内容となっています。正社員に登用する前に、十分注意する必要があるでしょう。