今回は、処遇改善加算のキャリアパス要件上難関とされるキャリアパス要件ⅣとⅤについてみていきましょう。

まずキャリアパス要件Ⅳ(改善後の年額賃金要件)は次の通りとされています。

 経験・技能のある介護職員のうち1人以上は、賃金改善後の賃金の見込額(新加算等を算定し実施される賃金改善の見込額を含む。)が年額440万円以上であること(新加算等による賃金改善以前の賃金が年額 440 万円以上である者を除く。)。ただし、以下の場合など、例外的に当該賃金改善が困難な場合であって、合理的な説明がある場合はこの限りではない。
・小規模事業所等で加算額全体が少額である場合
・職員全体の賃金水準が低い事業所などで、直ちに一人の賃金を引き上げることが困難な場合
 さらに、令和6年度中は、賃金改善後の賃金の見込額が年額440万円以上の職員の代わりに、新加算の加算額のうち旧特定加算に相当する部分による賃金改善額が月額平均8万円(賃金改善実施期間における平均とする。)以上の職員を置くことにより、上記の要件を満たすこととしても差し支えない。

「経験・技能のある介護職員」は「勤続年数 10 年以上の介護福祉士を基本としつつ、各事業所の裁量において設定が可能」とされています(Q&A5-2-3)。「勤続 10 年の考え方」については、 「勤続年数を計算するにあたり、同一法人のみだけでなく、他法人や医療機関等での経験等も通算する」ことが可能です。また、「すでに事業所内で設けられている能力評価や等級システムを活用するなど、10 年以上の勤続年数を有しない者であっても業務や技能等を勘案して対象とする など、各事業所の裁量により柔軟に設定可能」とされています(Q5-2-3)である。

年額440万円には、手当等を含めて判断することとされていますが、「社会保険料等の事業主負担その他の法定福利費等は含めずに判断」されます(Q5-2-1)。

法人単位で申請を行う場合、一括して申請する事業所の数以上、要件を満たす職員が設定されていればよ」く、たとえば、「5事業所について一括して申請する場合、5事業所のそれぞれに要件を満たす職員を配置する必要はなく、全体で5人以上要件を満たす職員が在籍していればよい」とされています(Q5-2-2)。

次にキャリアパス要件Ⅴ(介護福祉士等の配置要件)の内容を確認したうえで、関係するQ&Aをみていきましょう。

 サービス類型ごとに一定以上の介護福祉士等を配置していること。具体的には、新加算等を算定する事業所又は併設する本体事業所においてサービス類型ごとに別紙1表4に掲げるサービス提供体制強化加算、特定事業所加算、入居継続支援加算又は日常生活継続支援加算の各区分の届出を行っていること。

キャリアパス要件Ⅴについては、令和6年度中の新加算の算定対象期間中に、事業所や利用者の状況の変化に伴い、要件の適合状況(サービス提供体制強化加算Ⅰ・Ⅱ、入居継続支援加算Ⅰ・Ⅱまたは日常生活継続支援加算Ⅰ・Ⅱの算定状況)が変わることが考えられます。この場合、「令和6年6月以降に、新加算Ⅴのある区分から、新加算Ⅴの別の区分に移行することはできない」とされていることから、例えば新加算Ⅴ(1)を算定できなくなった場合に新加算Ⅴ(3)を算定することはできず、新加算Ⅱに移行することが適当とされています(問6-3)。なお、問6-3に掲載されている表によれば、新加算Ⅴ(1)から新加算Ⅱを新規に算定し始めるに当たり、追加で満たす必要のある要件は、「月額賃金改善要件Ⅱ」となります。したがって、旧介護職員等ベースアップ等支援加算に相当する加算額の3分の2以上を、基本給又は決まって毎月支払われる手当の改善に充てることが必要です。

次に「職場環境等要件」についてみていきましょう。

令和7年度以降に新加算ⅠからⅣまでのいずれかを算定する場合は、下表に掲げる処遇改善の取組を実施することが必要です。その際、新加算ⅠまたはⅡを算定する場合は、下表の「入職促進に向けた取組」、「資質の向上やキャリアアップに向けた支援」、「両立支援・多様な働き方の推進」、「腰痛を含む心身の健康管理」、および「やりがい・働きがいの醸成」の区分ごとに2以上の取組を実施し、新加算ⅢまたはⅣを算定する場合は、上記の区分ごとに1以上を実施することとされています。

また、新加算ⅠまたはⅡを算定する場合は、「生産性向上(業務改善及び働く環境改善)のための取組」のうち3以上の取組(うち⑰又は⑱は必須)を実施し、新加算ⅢまたはⅣを算定する場合は2つ以上の取組を実施することとされています。

なお、上記項目については、それぞれの項目を満たすためには、項目内に列挙されている取組のうち、一つ以上満たせばよいとされています。「例えば、「入職促進に向けた取組」区分の「事業者の共同による採用・人事ローテーション・研修のための制度構築」という項目の場合、「事業者の共同による採用」のみを実施することで、本取組を満たしたことにな」ります(問7-2)。

また、職場環境等要件の24項目について、当該年度において新規の取組を行う必要まではな」く、従前の取組を継続していればよいとされています。(問7-1)

生産性向上推進体制加算を算定している場合には、「生産性向上(業務改善及び働く環境改善)のための取組」の要件を満たすものとされています。また、1法人あたり1の施設または事業所のみを運営するような法人等の小規模事業者は、㉔の取組を実施していれば、「生産性向上(業務改善及び働く環境改善)のための取組」の要件を満たすものとされます。

新加算ⅠまたはⅡを算定する場合は、職場環境等の改善に係る取組について、ホームページへの掲載等により公表することとされています。

ところで、上記の職場環境等要件の見直しについては、令和6年度中は適用を猶予するとされています。したがって、令和6年度中の職場環境等要件としては、別紙1表5-2(改正前の職場環境等要件の一覧表)に掲げる職場環境等の改善に係る取組を実施し、その内容(別紙1表5-2参照)を全ての介護職員に周知することとされています。その際、新加算ⅠまたはⅡを算定する場合は、同表の「入職促進に向けた取組」、「資質の向上やキャリアアップに向けた支援」、「両立支援・多様な働き方の推進」、「腰痛を含む心身の健康管理」、「生産性の向上のための業務改善の取組」及び「やりがい・働きがいの醸成」の区分ごとに1以上の取組を実施し、新加算ⅢまたはⅣを算定する場合は、同表の取組のうち1以上を実施することとされています。

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参考リンク

介護職員の処遇改善(厚生労働省HP)